2008年12月02日
映画「ミルク」、全米で同性結婚論争の勢い
同性結婚がカリフォルニア州の住民投票で禁止され、ここハリウッドでは大きな社会問題となっている中、カリフォルニア州初のゲイ公職選当選者で同姓愛者の権利を求める運動の先駆者でもあったハーベイ・ミルクの伝記映画「ミルク」が公開されました。同姓愛者に対してまだまだ排他的であった70年代に米国で初めてゲイであることを公言して選挙に立候補。1977年にサンフランシスコの市会議員にゲイとして初めて当選を果たしたものの、議員就任1年も経たないうちに保守派の同僚議員によって射殺される波乱万丈の人生が描かれています。
サンフランシスコのゲイ・コミュニティー「カストロ通り」でカメラ店を経営するかたわら、同姓愛者の人権運動に携わってきたミルクは、地元ではカストロ通りの市長として同性愛者から絶大な人気を誇っていました。タイムズ誌が選ぶ20世紀の100人にも選ばれるなど、米国の歴史に名を残した人物の一人でもあります。サンフランシスコのゲイ社会では、ミルクの精神は今も引き継がれており、市内にはハーベイ・ミルク広場などもあります。
同性愛者を公立学校の教職に就くことを禁じる法案に対して戦ったミルク。もし今、彼が生きていたなら同性結婚禁止法案は果たしてどのような結果となったのでしょう。そして、今後、この問題はどのような方向へ向かっていくのでしょう。この作品が、同性結婚の未来に大きく影響を及ぼすことは間違いないでしょう。
ミルクを演じたショーン・ペンは迫真の演技で、多くの批評家から「ショーン・ペンの最高傑作」と評され、来年のアカデミー賞主演男優賞の最有力候補にあがっています。ペン自身も「ミルクという人物を演じることに恐れはなかった」とコメントしている通り、挑戦的な姿勢がうかがえる出来栄え。脇を固める俳優陣も豪華な顔ぶれで、アカデミー賞作品賞ノミネートも確実視されています。ミルクを射殺したダン・ホワイト議員役は、オリバー・ストーン監督の「W」でブッシュ大統領を演じたジョシュ・ブローリンが演じ、ミルクの長年にわたった私生活のパートーナー役には「スパイダーマン」シリーズで知られるジェームズ・フランコが抜擢されました。そしてミルク氏のオフィスで働く大学生役は「スピード・レーサー」で知られるエミール・ハーシュが演じています。
作品は前半からいきなりペン演じるミルクとフランコ演じるスコットの濃厚ラブシーンなどもあり、かなりセンセーショナルな内容。当然ながらゲイのカウボーイを描いてアカデミー賞を受賞した「ブロークバック・マウンテン」同様に物議をかもし出すかと思い気や、多くの批評家が好意的にこの作品を評しています。わずか36館での限定公開ながら公開3日間で140万ドルを稼ぎだす好調な滑り出し。今後公開劇場数が増えることが予想されているだけに、全米にミルクの活動が少しずつ広まっていくことでしょう。
史上初の黒人大統領が誕生した一方で、もっともリベラルな州として知られるカリフォルニア州で同性結婚が禁止されるという相反する事態が起きています。その原因は、オバマ候補に投票した多くの黒人が同姓愛に対して保守的だったからだと言われています。そのため、オバマ次期大統領も、簡単には同性結婚を認めることができない裏事情もあり、今後も賛成派と反対派の間で激しい論争が起こることでしょう。
この作品はカリフォルニア州のみならず全米に同性結婚の是非を問うきっかけとなりそうです。
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- 千歳香奈子(ちとせ・かなこ)
- 1972年、札幌生まれ。92年に渡米しシアトル大学付属語学学校に入学。93年サンタモニカ大学に入学し、写真を専攻。95年に同大学を卒業後、ロサンゼルスでテレビのコーディネーターなどを経験。96年に日刊スポーツ新聞社アトランタ支局でアトランタ五輪取材をアシスタント。99年6月から、ロサンゼルスを拠点にハリウッドスターのインタビューや映画情報を取材中。2008年1月末に学研より新書「ハリウッド・セレブ」を出版。
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