2008年7月01日
ハリウッドは新作公開日を巡って火花
夏休み真っ盛りのハリウッドでは毎週末、大作映画が公開されています。まれに、水曜日や木曜日などイレギュラーな公開日を選ぶケースもありますが、アメリカでは通常、金曜日が新作映画の公開日となっています。各スタジオはライバルとなる作品を避けるよう、公開日を調整していますが、今年はライバル作品が同じ日や1週間前後で公開されるという異常事態が起きています(表を参照下さい)。今夏は昨年と比べても話題作が目白押し。すでに昨年の同時期よりも興行がアップしていると伝えられていますが、新作の増えすぎが作品同士のバッティングという思わぬトラブルに発展しています。
今年のサマームービーは、5月2日に公開されたアメリカン・コミックの映画化作品「アイアンマン」で幕があがりました。同作は、週末だけで1億75万ドルもの売り上げを記録する大ヒットとなりましたが、同じ日にロマンチックコメディー「近距離恋愛」も封切られました。
翌週には「スピード・レーサー」と「ベガスの恋に勝つルール」がガチンコ対決。アニメ「マッハGoGoGo」を実写化した「スピード・レーサー」と、キャメロン・ディアス、アシュト・カッチャーがラスベガスを舞台に繰り広げるロマンチックコメディーの対決は、予想外の「スピード・レーサー」の完敗という結果となってしまいました。この週末は「アイアンマン」がこの2作品を蹴落として、前週に続いて首位をキープし、今夏最初の大ヒット作となりました。
3週目は、ディズニーの「ナルニア国物語 第2章カスピアン王子の角笛」が唯一の新作ということもあり、「アイアンマン」を抜いて一人勝ち。ファミリー向け作品としてその後も確実にヒットを続けています。
翌週は満を持して「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」が公開されました。金曜日ではなく、木曜日の公開でしたが、週末3日間で1億2600万ドルを超える大ヒットを記録。当然ながら、各スタジオはこの週末は公開を自粛しており、他には主だった作品は公開されていません。
その翌週は、人気ドラマを映画化した「セックス・アンド・ザ・シティ」が公開され、全米の多くの女性ファンを熱狂させた結果、あっさりと「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」を抜きさり、関係者を驚かせました。
6月に入ると学校が夏休みになる子供向けの作品も活発となってきます。ドリームワークスのアニメ「カンフー・パンダ」、アメリカでは絶大な人気を誇るアダム・サンドラー主演のコメディ「ドント・メス・ウィズ・ザ・ゾーハン」が、ガチンコ対決しました。結果は、「カンフー・パンダ」に軍配があがりました。
さらに翌週は、「アイアンマン」と同じマーヴェル・スタジオ製作の「インクレディブル・ハルク」とM・ナイト・シャラマン監督の新作「ハプニング」が対決。このところヒット作から見放されているシャラマン監督の新作vs前作が大コケした「ハルク」のリニューアル版という別の意味でも注目された再起をかけた対決は、「インクレディブル・ハルク」に軍配があがりました。
翌週はコメディー対決でした。60年代にヒットしたスパイパロディものドラマの映画化「ゲット・スマート」と、人気ベテランコメディアン、マイク・マイヤーズ主演の「ラブ・グル」が、同日公開。コメディ作品が同じ日に公開されるという珍事に、観客を二分化させることが懸念されていましたが、ふたを開けてみると「ゲット・スマート」の圧勝でした。同作はスティーヴ・カレルを主演に、アン・ハサウェイ、アラン・アーキン、ドウェイン・ジョンソンと豪華キャストで、すでに続編製作も噂されるほどの大ヒット。一方の「ラブ・グル」は、マイヤーズ、ジェシカ・アルバ、ジャスティン・ティンバーレイクと人気者を集めたにも関わらず、苦戦を強いられています。マイヤーズ作品としても久々の低い数字となり、公開日を選び間違えたことは否めません。
そして先週末は、ピクサーの新作「WAL・E/ウォーリー」とアンジェリーナ・ジョリー主演のアクション「ウォンテッド」が公開されました。環境汚染のために人間が住めなくなった地球で作業を続ける清掃ロボット、ウォーリーが主人公の「WAL・E/ウォーリー」は、「ファインディング・ニモ」を大ヒットさせたアンドリュー・スタントンがメガホンを取り、週末3日間で6000万ドルを超える興行を記録。一方の「ウォンテッド」は、アンジーがセクシーな殺し屋を演じ、ド派手なアクションも見所ですが、5110ドルと一歩及ばず2位発進となりました。しかし、R指定であることを考慮すると大健闘といえるでしょう。
ハリウッドはこの10年間で、年間に公開される作品は97年の345本から昨年の517本まで大幅に増えています。しかし、年間興行収入はわずかに増えただけで、1本あたりの平均興行収入は激減しています。作品が毎年右肩上がりで増えている今、年間52週しかない公開日は当然ながら、多くの作品でしのぎを削りあうことになります。スタジオ内でも、自社作品同士がバッティングしないように公開日を決めることすら難しくなっているという声もあがっています。
ガソリンの高騰で遠出を避けて映画を見る人が増えているため、毎週のように新作を公開しても観客数は増え続けているとも言われています。7月以降も続々と話題の新作が公開を控えており、業界も観客も忙しい夏となりそうです。
(このコラムの更新は毎週火曜日です)

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- 千歳香奈子(ちとせ・かなこ)
- 1972年、札幌生まれ。92年に渡米しシアトル大学付属語学学校に入学。93年サンタモニカ大学に入学し、写真を専攻。95年に同大学を卒業後、ロサンゼルスでテレビのコーディネーターなどを経験。96年に日刊スポーツ新聞社アトランタ支局でアトランタ五輪取材をアシスタント。99年6月から、ロサンゼルスを拠点にハリウッドスターのインタビューや映画情報を取材中。2008年1月末に学研より新書「ハリウッド・セレブ」を出版。
- 公式HPはこちら
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