2008年6月10日
過去の「ゲイシャ」ものとひと味違う「はんなり」
ハリウッドで「ゲイシャ」の世界を描いた映画と言えば渡辺謙、役所広司らが出演した「SAYURI」が真っ先に思い浮かびますが、日本人の私たちにとっては「やっぱり何かが違う」と違和感を覚えた方も多かったことでしょう。
もちろん芸者の世界は敷居が高く、別世界であることは確か。テレビや
映画で観たり、小説などで読んだことがあるだけという人が大多数でしょう。そんな私たちにとっては、本物の花街を知る機会など滅多にありません。そんな一見さんお断りの京都の花街の世界を描いたドキュメンタリー映画「はんなり」が、アメリカで話題となっています。
制作したのは「ラスト・サムライ」などに出演し、ハリウッドで女優活動をしている曽原三友紀さん。ハリウッドで女優活動をする中で日本人として正しい文化を伝えたいと役作りのために訪れた京都で芸に精進し、日本の伝統芸能を継承する舞妓、芸妓と接し、花街の世界に触れたことがきっかけで一念発起をして監督、プロデューサー、脚本家の三役をつとめた作品です。「はんなり」では、伝統芸能の継承に魂を注ぐ舞妓と芸妓、そしてその舞台裏を支える職人たち、花街の艶やかさや厳しさが美しい京都の四季とともに描かれています。
今年5月にニューヨークの国連総本部で行われたインターナショナルフィルムフェスティバルでは日本を紹介した映画として「たそがれ清兵衛」(山田洋次監督)に続く2作目としてセレクト上映されました。また、CBSラジオが、「めったに見ることのできないミステリアスなゲイシャの世界をわかりやすくとられえている」と絶賛するなど、米メディアからも高い評価を受けています。
6月26日からのサンタモニカでの上映に先立ち先月末、サンタモニカで同作にも出演している芸妓・小桃さんによるお座敷遊びのレクチャーが行われました。レクチャーでは、普段私たちが見ることのない本物のお座敷遊びから、お座敷三味線、舞のパフォーマンスなどをたっぷりと堪能することができました。
幼い頃から厳しくしつけられ、芸に精進してきた芸妓は、やはり映画の中で観たものとは違い、凛とした美しさとまばゆいばかりの可憐を身につけられており、同じ女性からみてもはっとするほどの美しさ。代表的なお座敷遊び「金比羅船々」を体験したりと、1時間があったと言う間でした。金比羅船船は、台の上にコップを置き、唄にあわせてコップがある時は手の平をひろげ、相手がコップを取ったら拳を握るというもの。失敗するとお酒を飲むのですが、この時にかける小桃さんの「一気コール」がとてもかわいく、男性でなくてもメロメロになってしまいそうです。「日本のおもてなしの心」に触れ、こんな風に殿方は遊んでいるのかと初めて知り、やはり「SAYURI」などで見た世界とはまったく違うことをあらためて実感しました。
「はんなり」は、普段カメラがなかなか入ることのできない世界を描いています。閉ざされてきた世界に踏み込んだことは、ひとえに曽原さんの熱意に花街全体が動かされたものに他なりません。あるインタビュー記事で曽原さんは、「芸舞妓さんと生活を共にするうちにおもてなしの心は世界の人たちにも通じる部分があることに気づきました」と話していました。ハリウッドで日本人女性の役と言えば、外国人がイメージするゲイシャの役が多い中で感じた違和感や悔しさが、この作品を作るきっかけとなったのでしょう。
「はんなり」の詳細を知りたい方はウエブページhttp://www.hannari.info/まで。
(このコラムの更新は毎週火曜日です)
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- 千歳香奈子(ちとせ・かなこ)
- 1972年、札幌生まれ。92年に渡米しシアトル大学付属語学学校に入学。93年サンタモニカ大学に入学し、写真を専攻。95年に同大学を卒業後、ロサンゼルスでテレビのコーディネーターなどを経験。96年に日刊スポーツ新聞社アトランタ支局でアトランタ五輪取材をアシスタント。99年6月から、ロサンゼルスを拠点にハリウッドスターのインタビューや映画情報を取材中。2008年1月末に学研より新書「ハリウッド・セレブ」を出版。
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