2008年2月19日
今年のアカデミー賞、予想しちゃいます!
今年もアカデミー賞の季節がやってきました。24日にハリウッドのコダック・シアターで行われる授賞式を前に、今年のアカデミー賞の行方を予想してみました。
昨年11月から続いた米脚本家組合(WGA)のストの影響で、今年は前哨戦といわれるゴールデン・グローブ賞授賞式が中止となり、アカデミー賞も一時は開催が危ぶまれていました。そんな暗いハリウッドの現状を反映するかのように、80回を迎えた今年のアカデミー賞は、米社会の闇を描いた作品が目立っています。血が吹き飛んだり、銃が乱射されるなど暴力的な表現が多いことが最大の特徴で、保守的なアカデミー会員たちにこの残虐性がどこまで受け入れられるかが注目されています。
作品賞は、最多8部門にノミネートされている「ノーカントリー」と「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」の一騎打ちとなるでしょう。テキサスを舞台に米国社会の暴力性に迫る「ノーカントリー」はコーエン兄弟がメガホンを取り、コイントスで殺人を決める冷酷な殺し屋と昔かたぎの保安官を対比させながら、独特の世界感で人間の闇を描いています。カリフォルニアの石油王にのし上がった男性の半生を描いた「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」は、ダニエル・デイ=ルイス演じる主人公の偏執的なまでに成功にこだわる姿が印象的です。対抗馬は、もみ消し屋をしていた主人公(ジョージ・クルーニー)が、大企業の陰謀を知り、告発を決意する社会派ドラマ「フィクサー」。また、高校生の妊娠を描き、小品ながらノミネートされた「JUNO ジュノ」も、台風の目となるかもしれません。
主演男優賞部門も、残虐なキャラクターが目立っています。「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」は、ノミネートされたジョニー・デップが演じる理髪師が、家族を奪われた復讐から剃刀で客の首を次々とかき切る残虐シーンが話題となりました。また、ビゴ・モーテンセンがノミネートされた「イースタン・プロミセズ」も、サウナで全裸で刺客との立ち回りを演じるなど、過激な暴力描写が多く登場します。
本命は「ゼア・ウィル・-」のダニエル・デイ=ルイスでしょう。しかし、ノミネート8度目でゴールデン・グローブ賞を初受賞したジョニデも有力候補です。しかし、ダニエルも同じくゴールデン・グローブ賞ドラマ部門で主演男優賞を受賞しており、ドラマ部門受賞者がアカデミー賞も受賞するケースが多いことから、ダニエルが1歩リードというところでしょうか。また、「告発のとき」で予想外のサプライズ・ノミネートを果たしたトミー・リー・ジョーンズの健闘も期待大です。
助演男優賞は、「ノーカントリー」で不気味な殺人鬼を「怪演」したハビエル・バルデムが最有力。対抗馬は、ナショナル・ボード・オブ・レビュー、全米映画批評家協会賞を受賞している「ジェシー・ジェームズの暗殺」のケイシー・アフレックでしょう。兄ベン・アフレックの初監督作品にも主演し、高い評価を受けていただけに、サプライズ受賞もあるかもしれません。
主演女優賞は、混戦が予想されます。俳優組合賞、ゴールデン・グローブ賞など重要な賞を総なめしている「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」のジュリー・クリスティが1歩リードかと思われていますが、「エディット・ピアフ~愛の賛歌~」でマリオン・コティヤールが演じたエディット・ピアフの鬼気迫る演技はオスカー好み。ゴールデン・グローブ賞も受賞しており、オスカー受賞の可能性も十分です。また、「JUNO ジュノ」で16歳で妊娠する高校生をさわやかに演じたエレン・ペイジも受賞の可能性があるでしょう。
助演女優賞部門は、「アイアム・ノット・ゼア」でボブ・ディランを演じたケイト・ブランシェットが1歩リード。ゴールデン・グローブ賞、全米映画批評家協会賞などを受賞しており、主演女優賞とのダブル受賞にも期待がもたれています。
監督賞は「ノーカントリー」で、「ファーゴ」以来2度目のノミネートを果たしたジョエル&イーサン・コーエン監督が優勢でしょう。ただ、暴力描写が票割れを招く恐れもあります。対抗馬は、「ゼア・ウィル・-」のポール・トーマス・アンダーソン監督です。
日本人絡みでは、外国語作品賞にノミネートされた浅野忠信主演のカザフスタン、ロシア、ドイツの合作映画「モンゴル」と、エディ・マーフィ主演の「マッド・ファット・ワイフ」で特殊メイク賞にノミネートされたメイクアップ・アーティストの辻一弘さんの受賞も期待したいところです。
質と共に興行成績も大きな判断基準となるアカデミー賞。まだまだ保守的な一面もあり、正統派な作品が好まれる傾向が強いために、最後の最後でドンデン返しがあるかもしれません。
(このコラムの更新は毎週火曜日です)
- 千歳香奈子(ちとせ・かなこ)
- 1972年、札幌生まれ。92年に渡米しシアトル大学付属語学学校に入学。93年サンタモニカ大学に入学し、写真を専攻。95年に同大学を卒業後、ロサンゼルスでテレビのコーディネーターなどを経験。96年に日刊スポーツ新聞社アトランタ支局でアトランタ五輪取材をアシスタント。99年6月から、ロサンゼルスを拠点にハリウッドスターのインタビューや映画情報を取材中。2008年1月末に学研より新書「ハリウッド・セレブ」を出版。
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