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2010年8月03日

東海大相模・一二三慎太/ドラフトリポート

 「ハンカチおやじのドラフトリポート」。第13回は東海大相模・一二三慎太投手です。

 もしイチローが突然、右打ちに変わってしまったら、皆さんはどう思うだろうか? 東海大相模の一二三がこの春、オーバースローからサイドに投げ方を変えた。ハンカチおやじにとってそれは衝撃的なニュースだった。イチローが左打ちから右打ちに転向するくらいのインパクトがあった。

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 優勝候補と騒がれて臨んだセンバツ。1回戦であっけなく敗れ、一二三は精神的に大きなダメージを受けたはずだ。自分のフォームを見失い、投げ方が分からなくなってしまった。いわゆる「イップス」に近い状態に陥ったのではないか。本来なら時間をかけてゆっくりとフォームを元に戻せばいいのだろうが、高校生には時間がない。夏の大会はすぐそこに迫っている。自ら門馬監督にサイドスロー転向を直訴したそうだ。主将も務めていた男だ。責任感の強さゆえ、チームのために決断したのだろう。

 そんなことを思いながら7月26日、神奈川大会準々決勝、慶応戦を見に横浜スタジアムに行った。サイドの一二三を見るのはこの日が初めて。昨秋の関東大会は千葉まで見に行った。完成度の高い素晴らしいピッチングを見て「ドラフト1位もあるんじゃないか」と鳥肌が立ったのを思い出した。

 試合前、三塁ベンチ前でウオーミングアップする一二三の姿が見えた。やはり上ではなく横から投げていた。スリークオーターに近い横をイメージしていたのだが、むしろ下に近いサイドハンド。現実を目の当たりにしてハンカチおやじは少し切なくなってしまった。後日、この気持ちをドラフトライターの小関順二さんに伝えると「僕は悲しい気持ちになりましたよ」と話してくれた。小関さんとは昨年末、忘年会の席で“模擬ドラフト会議”を開催。ハンカチおやじは早大・大石を1位指名したのだが、小関さんは敢然と一二三を1位指名。それだけ惚れこんでいただけに「悲しい」という気持ちはよく分かる。

 試合が始まった。1回、一二三は3番打者に左中間を破られるタイムリー二塁打を打たれあっさりと1点を献上。しかし、これで目が覚めたのかエンジンがかかった。2回以降、散発でシングルヒットは許すものの、ここという場面では外角にストレート、スライダーをズバっと決める。さらに内角球で詰まらせて面白いようにゲッツーを取る。慶応打線もそこそこレベルは高いはずなのだが、大学生と高校生が対戦しているかのようなレベル差を感じた。対応できていたのは評判の2年生4番・谷田くらいか。「モノが違う」というのはまさにこのこと。結局10安打され6四死球を与えながら2失点で完投してしまった。

 試合後、一二三のコメントを聞きたくなって囲み取材の輪に加わった。
 記者 「今日のピッチングについて」
 一二三 「最初から打たせて取ろうと思っていました。ちょこちょこヒットは打たれたんですが、ゲッツーに取ればいいかという感じです」
 記者 「調子は」
 一二三 「慶応の選手が真っすぐを狙っていたこともあったんですが、スライダーが良くキレました。今日はチェンジアップも投げました。いろいろ工夫して投げてみました。スピードは意識しませんでした」
 記者 「サイドスローのフォームは固まってきたか」
 一二三 「まだ完ぺきではありませんが、試合を重ねていく中で固めていきたいです」

 間近で見た印象は「顔がでかい」。眉毛はきれいに細く整えている。大きなことは言わない。淡々とていねいに質問に答える姿が印象的だった。

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 門馬監督は「6~7割の力でいけ」と指示を出していたそうだ。つまり「打たせて取れ」ということだが、その通りのピッチングをしてみせた。ただ、ここぞという場面では力でねじ伏せるかのようなピッチングで三振を奪うなど、能力の高さを見せつけた。

 やはり、高校生のレベルでは頭一つ抜けている。もし、本気で投げたら手も足も出ないのではないか。この日の最速は146キロ。2日前の鎌倉学園戦では自己最速の150キロも出した。上から投げているときから制球力は抜群だった。打者を見下ろして投げるようなふてぶてしさもある。184センチ、83キロの立派な体と高い運動能力。ハンカチおやじが気になるのは「顔がでかい」ことくらい。それと上から投げている一二三を知っていることから沸き起こる寂しさか。先入観さえ持たなければ文句なしのドラフト1位候補であるのは間違いない。

 甲子園が終わったら、投球フォームはどうするのだろう。また上に戻すのか、それとも…。上に戻すのであれば西武涌井、横のままなら巨人の元エース、斎藤雅樹を目指してもらいたい。

 記者会見を終え球場を去る一二三の後ろ姿を見送った。Tシャツの背には「約束 今まで歩いてきたこの道に間違いはない」とプリントされていた。まだ17歳。上から投げても一二三慎太、横から投げても一二三慎太。イチローが右で打ったら200本打てないかもしれないが、一二三はどこから投げても一流であることを確信した。己が選んだ道を信じて、悔いのない投手人生を送ってほしい。

 ◆一二三慎太(ひふみ・しんた)1992年(平4)9月29日、大阪・堺市生まれ。城山台小2年から、外野手として野球を始める。美木多中ではボーイズリーグ「ジュニアホークス」に所属し、3年夏に抑えとしてジャイアンツカップ優勝。東海大相模では1年からベンチ入りし夏の大会にも登板。2年秋の関東大会で優勝し、明治神宮大会は準優勝。今春センバツ出場も初戦で自由ケ丘(福岡)に2-4で敗れた。夏は神奈川大会で優勝。33年ぶりの夏の甲子園出場の原動力となった。家族は両親。184センチ、83キロ。右投げ右打ち。

 ◆ハンカチおやじ 1985年日刊スポーツ新聞社入社。野球記者を11年。巨人、西武、日本ハム、アマ野球などを担当。野球デスクを7年勤めた後、2年間の北海道日刊スポーツ出向などを経て、現在はニッカンスポーツ・コムの編集を担当。取材で世話になった伝説のスカウト、木庭教(きにわ・さとし)さん(故人)を野球の師と仰ぐ。「ハンカチおやじ」は一人息子が佑ちゃんと同じ1988年生まれということから。177センチ、70キロ、右投げ右打ち(関係ないよ~)。

(おまけ)


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矢島彩「アマ〜い野球ノート」
矢島彩(やじま・あや)
 1984年、神奈川県生まれ。5歳くらいから野球に夢中になり、高校時代からアマチュア野球中心に本格観戦を開始。北海道から沖縄まで飛び回り、年間150試合を観る。今春、めでたく都内の大学を卒業したが就職はペンディングし、今年も大好きな野球を追いかける。取材先の監督さんたちからは「若いころの(失礼!)薬師丸ひろ子に似てるね」と言われ、かわいがられているようだ。大好物のオムライスをお腹に詰め込んで、今日も球場に行ってきま~す!

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