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2010年7月19日

習志野・山下斐紹/ドラフトリポート

「ハンカチおやじのドラフトリポート」。第12回は習志野(千葉)の山下斐紹捕手です。初の高校生の登場です。

 7月14日午前8時30分、千葉県営天台球場。ネット裏にはスカウトがいるわ、いるわ、その数20人以上。普段は目立たない場所にいる西武のスカウトがこの日は正面に堂々と陣取っているではないか、しかも5人も! お目当ては習志野の山下捕手。ハンカチおやじも都内の自宅を朝6時半に出発。地下鉄、JR、モノレールを乗り継いで2時間かけて駆けつけた。

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 顔見知りのスカウトを見つけて朝のあいさつ。
 おやじ 「おはようございます。習志野の山下君を見にきました」
 スカウト 「山下ねえ…」
 おやじ 「いいキャッチャーなんでしょ?」
 スカウト 「いい選手なんだけど、ここがねえ」
 スカウト氏はそう言って手で胸をたたいた。
 おやじ 「ハートが弱いんですか?」
 スカウト 「違うよ。その逆。強すぎるっていうのか、生意気というのか、キャッチャー向きの性格じゃないんだよね。ピッチャーだったらこっちの方がいいんだろうけどさ」

 試合前からいきなりこんな話を聞かされて、ますます山下という捕手に興味が沸いた。それではじっくり見させてもらおうか。

 まずは守りから。イニング間の二塁へのスローイング。スカウトが一斉にストップウォッチを手に持った。ハンカチおやじも続く。

 計るのは捕ってから二塁手のグラブに届くまでのタイム。1回は1・91秒だった。やや一塁側に逸れた。この試合は7回コールドで終了したが、試しに全イニング計ってみた。

1回 1・91秒(やや一塁側に逸れる)
2回 2・04秒(ショートバウンド)
3回 1・91秒(やや三塁側に逸れる)
4回 1・86秒(ストライク!)
5回 1・84秒(ショートバウンド)
6回 1・90秒(ストライク!)
7回 ボケッとしていて計測を忘れる(コラッ!)

 2秒を切れば上々と言われるがほとんどが2秒未満。自己ベストタイムは1・79秒というから、スローイングは合格といったところか。

 次はバッティングだ。打順は4番。1回裏1死一、二塁で回ってきた。カウント1-3からの低め直球をジャストミート。打球は快音を残すと低いライナーで右翼手の右を抜けていった。先制の2点二塁打。50メートル5秒台という足の速さもまずまずだった。

 第2、第3打席は死球。1個目はかすった程度だったが、2個目は背中へドスン。かなり痛かったらしく臨時代走を出してもらった。第4打席では右前にタイムリー。これも鋭いライナーだった。

yamasita-narasino-1.jpg

 この選手、とにかく目立つ。走者に出れば大きなリードを取って二塁をうかがう。この日も1盗塁を決めた。守備でも一塁走者をさかんにけん制。もちろん基本的なカバーリングも怠らない。フットワークが良いというのかよく動くのだ。キャッチングに関しては、習志野の投手が軟投派のため判断できず。後ろに逸らすシーンはなかった。

 試合後、山下の囲み取材をのぞいてみた。切れ長の目。汗をしたたらせながら、直立不動の姿勢で記者の質問にていねいに答えていた。

 記者 「1回の先制打について」
 山下 「カウント1-3だったので変化球はないなと思い、ストレートを狙ってました。今日は右から左へ強い風が吹いていたので、逆方向(左)に打つことも考えましたが、相手が内角を攻めてきたので、右へ短いのでいいと思って打ちました。フルスイングはしていません」
 記者 「スローイングについて」
 山下 「5月の県大会で右手ひとさし指を骨折しまして、まだ60%くらいです。一塁へのけん制は走者のリードが大きかったので狙っていました」
 「目標の選手は」
 山下 「巨人の阿部捕手です。自分も打てるキャッチャーになりたいです」

 なかなか立派な受け答えである。これだけ中身のあることを話してくれれば、記者も原稿が書きやすいはずだ。

 再びスカウトに話を聞いてみた。今度は現役時代中日、巨人で捕手として活躍した阪神中尾義孝スカウトに聞いた。

 おやじ 「山下、どうですか」
 中尾スカウト 「いいですよ。パーツ、パーツはすごくいい。足首の堅さとか課題もあるだろうけどスナップスローもできるし肩も強い。バッティングもいい。まあ、今日くらいのレベルのピッチャーは打ってもらわないと困るけどね。高校生ではトップレベルの選手ですよ」
 おやじ 「捕手としての適性はどうですか? 生意気だと言う人もいますが」
 中尾スカウト 「はっはっはっ。生意気そうに見えるけど、プロはそのくらいの方がいいよ(笑)」
 おやじ 「捕手の評価で大事なことは何ですか」
 中尾スカウト 「肩も大事だけど、まずはキャッチング。あと雰囲気も大事」

 中尾スカウトも現役時代はフットワーク軽く、打って守れて走れる捕手だった。そのスカウトがここまで認めているのだから山下の実力は本物だ。さらに「雰囲気」も持っていると思う。ハンカチおやじは桐蔭学園時代の高木大成(慶大-西武)を取材したことがあるが、彼も独特の雰囲気があった。何をやらせてもうまいし野球選手として様になっていた。プロの捕手では伊東(元西武)。足も速く、内野手をやっても名選手になったのではないか。山下も野球選手として必要な素質をほぼ持っている。プレーに華やかさもあるし、経験を積めば名捕手になる可能性は十分あるはずだ。

 ただ、捕手というポジションは難しい。まして高校から入るとなると、かなりのレベルに達していないといきなり1軍で活躍するのは無理だろう。最近10年間で高卒でプロ入りした捕手は44人。そのうち1軍である程度実績を残しているのは銀仁朗(05年西武1位)狩野(00年阪神3位)山崎(00年ソフトバンク4位)ぐらい。成長に時間がかかるポジションだけに、これから先活躍する選手も出てくるはずだが、厳しい世界であるのは間違いない。

 山下の目標は巨人阿部。生意気と言われようが、何を言われようが今は目標に向かって我が道を突き進めばいい。まだ17歳の高校生。心技体すべてを磨いて10年後、日本を代表するキャッチャーに成長していてほしい。

 ◆山下斐紹(やました・あやつぐ)1992年(平4)11月16日、北海道生まれ。磯部二中では千葉西シニアに所属し、1年時に投手から外野手に転向。習志野入学後、捕手転向。1年夏からベンチ入り。1年秋からレギュラーとして、09年春に33年ぶりとなるセンバツ出場を果たし2試合で5打数2安打。7月14日現在高校通算本塁打は33本。遠投120メートル、50メートル5・9秒。178センチ、74キロ。右投げ左打ち。

 ◆ハンカチおやじ 1985年日刊スポーツ新聞社入社。野球記者を11年。巨人、西武、日本ハム、アマ野球などを担当。野球デスクを7年勤めた後、2年間の北海道日刊スポーツ出向などを経て、現在はニッカンスポーツ・コムの編集を担当。取材で世話になった伝説のスカウト、木庭教(きにわ・さとし)さん(故人)を野球の師と仰ぐ。「ハンカチおやじ」は一人息子が佑ちゃんと同じ1988年生まれということから。177センチ、70キロ、右投げ右打ち(関係ないよ~)。

(おまけ)


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矢島彩「アマ〜い野球ノート」
矢島彩(やじま・あや)
 1984年、神奈川県生まれ。5歳くらいから野球に夢中になり、高校時代からアマチュア野球中心に本格観戦を開始。北海道から沖縄まで飛び回り、年間150試合を観る。今春、めでたく都内の大学を卒業したが就職はペンディングし、今年も大好きな野球を追いかける。取材先の監督さんたちからは「若いころの(失礼!)薬師丸ひろ子に似てるね」と言われ、かわいがられているようだ。大好物のオムライスをお腹に詰め込んで、今日も球場に行ってきま~す!

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