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2009年7月13日

静岡・吉原商、埼玉から来た転校生

 静岡県富士市にある吉原商。今春34年ぶりに県大会に進出した市立高校だ。昨年9月に埼玉栄で8年間監督を務めた戸栗和秀監督が就任。教え子2人も一緒に転校を決意した。

 昨年夏の埼玉県大会が始まる前。埼玉栄の選手たちは、戸栗監督が秋から吉原商へ転任することを聞いた。

 山崎珠嗣(みつぐ)遊撃手(3年)は当時2年生で埼玉栄の3番を任されていた。横浜ベイスターズ・山崎憲晴内野手を兄に持ち、打撃センスは兄以上との評判。170センチ、75キロと小柄だが、6月の練習試合では富山商や東邦(愛知)などから6週連続で本塁打を放っている。

 「転校すれば最後の1年は公式戦に出られないという規定は知っていました。でも、戸栗監督についていくと即決でした」。

 日本高野連の参加者資格規定、第5条の3で『転入学生は、転入学した日より満1カ年を経過したもの。ただし満1カ年を経なくても、学区制の変更、学校の統廃合または一家転住などにより、止むを得ず転入学したと認められるもので、本連盟の承認を得たものはこの限りではない。(以下略)』と定めている。今回の転校は学区制の変更などにはあたらないため、2人は1年間公式戦に出場できない。

 “最後の夏”は県大会準々決勝で散った。11月に転校してから半年以上が経過。甲子園出場、目指すことも戦うことさえも叶わない。一体何をモチベーションに練習してきたのだろうか。山崎は大きな目を一層輝かせながら言い放った。

 「卒業後に野球をやるためと、吉原商のチームメートを勝たせるために練習しています」。

 2年生の兵藤浩紀三塁手も、そんな憧れの先輩を追いかけるように転校した。昨夏もレギュラーで活躍していたほど。兵藤は3年になれば試合出場が可能だ。今はそのときのために練習に励み、練習試合も5番に座っている。

 吉原商へ来て同学年は4人だけ。「みんなのんびりしていて、いい人たちばかりでした」と、シャイな兵藤もすぐに溶けこむことができた。新しい仲間には野球の基礎的なことから教えられることは何でも教えていった。

 「一緒に練習してきた仲間です。甲子園に出てほしいからスタンドから(応援を)頑張ります」(兵藤)。

 吉原商の選手たちも今までの練習とのギャップに動揺を隠せなかった。戸栗監督だけでなくコーチ2人も一緒にやって来たからなおさらだ。戸栗監督は「正直誰か辞めてしまわないか不安でした。でも、全員で夏を目指すことができて本当にうれしい」と、笑みをこぼす。今では野球部員が先頭に立って学校を引っ張っているという。この日も他部の顧問が練習を見学していた。

 「僕は戸栗監督に教わりたくて埼玉栄に行ったんです。もちろん甲子園に出られたらいいですけど、出ることがすべてじゃない。だから迷わず転校を決めた」(山崎)

 「山崎さんは野球はもちろん考え方もしっかりしていて尊敬しています。山崎さんが転校するなら僕も一緒に行こう」(兵藤)。

 2人の選んだ道は甲子園には通じていない。だが、これから歩む人生において師弟関係はずっと続く。甲子園を目指す過程でかけがえのないものを手に入れている。

※吉原商は12日に行われた1回戦、磐田北戦に12-1で快勝しました。

(ノート)


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矢島彩「アマ〜い野球ノート」
矢島彩(やじま・あや)
 1984年、神奈川県生まれ。5歳くらいから野球に夢中になり、高校時代からアマチュア野球中心に本格観戦を開始。北海道から沖縄まで飛び回り、年間150試合を観る。今春、めでたく都内の大学を卒業したが就職はペンディングし、今年も大好きな野球を追いかける。取材先の監督さんたちからは「若いころの(失礼!)薬師丸ひろ子に似てるね」と言われ、かわいがられているようだ。大好物のオムライスをお腹に詰め込んで、今日も球場に行ってきま~す!

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