2008年7月29日
北神奈川大会決勝、2人のキャプテン<その2>
<高校野球北神奈川大会:慶応9-6東海大相模>◇27日◇決勝
慶応の主将、山崎錬内野手(3年)は言った。「神様は明るいチームに微笑むと思うんです」。
慶応は6回以降毎回走者を許すピンチの連続。それでも、山崎は張り詰めたシーソーゲームを思う存分楽しんでいた。
「10回やって1回勝てるかどうかの相手。エンドレスの精神です。何回でもピンチをつくってやる、粘り強く耐えてやるという感じです」。
延長13回、慶応2死三塁のチャンス。打席の山崎は大田が5球連続でストレートを投げており、次のボールもストレートだと賭けた。フルスイングした打球は右翼スタンド中段に突き刺さるダメ押し2ラン。「本当にストレートだった。打っちゃった…」と、本人もびっくりの一撃は、東海大相模の戦意を喪失させた。うなだれる大田は「ストレートばかりで押したことが自分勝手なことだったのかもしれない」と、自分を責めていた。
センバツは華陵(山口)に0-1で完封負け。春の県大会も桐光学園(神奈川)に8回コールドゲーム。どちらも惨敗だった。不甲斐ない試合が続くチームに、マイナー(控え)選手たちが口火を切った。
「どうしてガチガチになって野球やってるんだよ!」。
試合中の表情が固く、ベンチから出る指示も内容がない声のみ。エンジョイベースボールの精神を失っていた。上田誠監督は「自分たちは打つチームではないのに、打つチームと勘違いし“自分が打たなきゃ”となっていた」とも話す。もちろん山崎も主将として責任を感じていた。華陵戦で1人4安打と気を吐いたものの、ベンチの雰囲気は最悪だったという。
狂った歯車はミーティングなどを重ねて少しずつ戻り始める。5月下旬にはエース・田村圭(3年)が復帰。今度は右腕・青野紳三郎(3年)が台頭しベンチ入りを獲得した。みんなが彼の努力を認め喜んだ。6月の練習試合は17戦全勝。常にマイナー選手の言葉を肝に銘じきた。そして最後の夏、甲子園に出れるか出れないかの瀬戸際で、エンジョイベースボールを発揮した。
今大会、山崎はいつもにも増して勝負強かった。26打数13安打16打点の数字に、特筆すべきは3本の本塁打がすべて走者を置いた場面だったことだ。
「ランナーがたまるとすごい集中力になる。みんなのおかげで打席に入れているし、とにかくみんなでいい思いがしたいから」。
センバツの野球は慶応のものではない。しかし、この敗戦で教えてくれたものは大きかった。劣勢でもピンチでも常にそれを楽しむ野球をしたい。そうすれば、きっと聖地の女神も笑ってくれる。
◆大田泰示(おおた・たいし)1990年(平2)6月9日生まれ。広島県福山市出身。188センチ、88キロ。右投げ右打ち。城南中学では松永ヤンキースに所属し投手兼遊撃手。高校入学後1年秋から4番に座っている。高校通算65本塁打。進路については「監督と相談します」と、明言を避けている。
◆山崎錬(やまさき・れん)1990年(平2)生まれ。東京都出身。175センチ、73キロ。右投げ左打ち。尾山台中時代は世田谷ボーイズで主将を務めていた。慶応では旧チームから「3番二塁」として活躍。優勝直後に上田監督と涙の抱擁。「ずっと離したくなかったです」。※生年月日は学校側の方針により非公表。
(ノート)
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