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2008年9月17日

「勝負の年」に浮き沈み味わった岩田

 人気のある球団でマイペースを貫くことは難しい。少しでも活躍すれば、一気に知名度がアップする。スター選手のような扱いも受ける。逆に失敗すればたたかれる。気持ちが強くなければ大きな成功はつかめないだろう。そういう意味で、岩田は強い。

 3年目、今年で25歳。同学年ということもあって、キャンプ中から何かとしゃべる機会も多かった。ブレークした今季のここまでを勝手に振り返ってみたが、常に平常心を保ち続けている印象が強い。

 私事で恐縮だが、記者は3月下旬から1カ月、メジャー取材のため阪神取材を離れていた。つまり、開幕からの猛虎快進撃を目の当たりにしていない。その間に岩田は開幕ローテ入りし、すでに3勝を挙げていた。すっかり貫禄(かんろく)も出てきただろうと想像したが、岩田は岩田のままだった。

 帰国後、初めての取材。記者の姿を目にした岩田が近づいてくる。「久しぶりやん。どっか行ってたん?」。全く飾らない姿にホッとした。だいぶ遅くなったが「プロ初勝利、おめでとう。なんかすごいことになってるやん」と声をかけた。左腕は苦笑い。「ほんまに。こっちは全然変わらへんねんけどな…」。大ブレークしたシーズン序盤。周囲が絶賛する中、浮かれる様子はなかった。

 シーズン中盤に入ると、勝ち星に恵まれなくなった。球宴ファン投票でも、リーグ先発部門1位を走りながら最後は落選。辛い時期が長く続いた。少し心配になって声をかけると、逆に笑われてしまった。「オールスター落選? 何言ってんの。予想通りやん。そんなに何もかもうまくいく訳ないもん」。壁にぶち当たることは想定内。過熱する周囲をよそに、冷静に自分を見つめ続けた。だからこそ、落ち込み過ぎることはなかった。

 そして、シーズン終盤。9月15日中日戦(ナゴヤドーム)で9勝目を挙げ、いよいよ2ケタ勝利に王手をかけた。

 「もう後がない。勝負の年」。

 今年にかける思いは人一倍強かった。1年間ローテを守るため、強い気持ちでマイペースを貫いた。浮き沈みを味わった08年。最高の瞬間を迎えるまで、岩田の「平常心」は変わらないだろう。

(佐井陽介)


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