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2005年10月20日

涙の向こうに見えるもの

 涙の向こうに何が見えただろう。17日のプレーオフ第5戦。ソフトバンクは負けた。レギュラーシーズンを2年連続で1位通過しながら、またもこの短期決戦で負けた。

 試合終了直後。ロッテの胴上げで沸くグラウンドとは対照的に、球場全体は静まり返り、一塁側ベンチにも沈黙が流れた。ぼうぜんとする松中。泣きじゃくる的場。テレビのモニターを眺めていると、ベンチ裏の入り口に、松葉づえを両脇に挟んだ、城島の姿があった。前列のいすに座る的場に近寄った。

 「胴上げをしっかり見とけ。この悔しさを忘れるなよ」。

 的場を抱き寄せる城島は、そう声を掛けたという。8回に逆転打を打たれた馬原も「胴上げは見たくなかったけど、城島さんに『見て、悔しさを忘れるな』と言われたので」と、思い直して、ロッテの歓喜の輪を目に焼き付けた。

 城島の言葉で思い出した。97年10月3日。場所は西武球場だった。先発吉武が9回を1失点に抑え、試合は同点のまま延長戦へ。延長10回、続投した吉武が先頭打者の鈴木健にサヨナラ本塁打を打たれ、西武のリーグ優勝が決まった。この試合後、三塁側ベンチで悔し涙を流す吉武に、城島はこのときも言っていた。「胴上げを見ましょう。この胴上げを忘れないでいましょう。この悔しさを忘れず、自分たちが胴上げする立場になりましょう」。

 この97年で20年も続いた、不名誉な連続Bクラスの日本記録に別れを告げた。98年はオリックスと同率の3位、そして99年に初優勝、初の日本一まで上り詰めた。感極まって城島は泣いた。あの日、流した涙は大きな糧になっていた。

 ロッテに敗れ、ベンチにで泣いていた、的場、川崎らは99年の優勝を知らない。弱小軍団が、そこまでたどり着いた過程も見ていない。彼らの涙の向こう側に、王監督を胴上げする自分たちの姿があった、と信じたい。

【ソフトバンク担当・中村泰三】

(中村泰三)


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鷹番日記
中村泰三(なかむら・たいぞう)
 93年(平成6)入社。広告部、レース部競輪担当を経て報道部。94年オフからホークス担当。02年から東京本社野球部に出向し、巨人、横浜、米メジャーなどを取材。04年11月に西部本社復帰。現在ホークス担当。35歳。
石田泰隆(いしだ・やすたか)
 03年(平15)入社。報道部 入社直後は、アマチュアスポーツを担当し、04年2月からホークスを担当。現在に至る。27歳。
進尚幸(しん・なおゆき)
 96年(平成8)入社。報道部写真担当、ホークスを中心に九州のスポーツ全般を取材。全国津々浦々を取材する。スペイン1部リーグのバリャドリードに在籍した城彰二を取材。34歳。
梅根麻紀(うめね・まき)
 97年(平成9)入社。入社してからカメラマン一筋。ダイエーホークス、サッカー、高校野球、柔道など九州関連のスポーツ写真報道に携わる。イタリア・セリエAでヴェネチア在籍時代の名波浩(現磐田)を取材。31歳。
押谷謙爾(おしたに・けんじ)
 96年(平8)入社。総務部、レース部を経て報道部。99年秋からサッカー担当。大分、福岡、鳥栖を中心に九州リーグ、高校サッカーのほか、02W杯、セリエAなどを取材。03年から大分支局。33歳。

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