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2008年08月28日

「インスタント・リプレー」本塁打判定

 MLBは28日のカブス対フィリーズなど3カードを皮切りに、本塁打の判定にビデオを導入する。翌29日からは全試合に導入される予定で、これは昨年のゼネラルマネージャー会議での評決で決定されていたもの。

 ビデオ判定が行われるのは、フェアかファウルか、フェンスを越えたか、観客が触れたか、などあくまで本塁打に関する判定に限定されている。実施方法は主審が必要性を認めた場合、リーグのビデオ判定担当者に連絡し、専用モニターで再生される映像を主審1人が見て、単独で判断を下すことになっている。

 このようなビデオ判定システムは“インスタント・リプレー”と呼ばれ、MLBを除くいわゆるアメリカ4大プロ・スポーツリーグではいずれも導入済み。バスケットボールのNBAでは各クォーターの終了ブザーが鳴った時に放たれたシュートがブザー前のものか後かの判断や乱闘などによる選手の退場判定に使用されている。

 一番広範囲に使われているのがアメリカンフットボールのNFLで、選手の足がフィールドの外に出ていたかどうかやパスの成功不成功などの判定に不服がある場合、出場チームの監督や審判がビデオ判定を要求できるルールが実施されているのだ。

 プレーの判定をきっちりつけたがるメディアやファンが多いアメリカでMLBがビデオ判定導入をためらったのが少し不思議なくらいである。

 しかしプロ・スポーツの興業として見た場合、ビデオ判定は必ずしも良い結果を生むわけではないのだ。例えば先に紹介したNFLの場合、1986年にまず導入されたのだがビデオ判定の要求があまりに出されるため、試合がしばしば中断する事態が発生。ゲームとしてのおもしろさが阻害されることになった。そのため同ルールは一度廃止され、その後ビデオ判定要求は2回まで、といった制限を設けて99年に復活した経緯がある。

 また特にMLBの場合、今までのやり方で十分問題ないという考えも根強いようだ。

 今回の導入に対してバド・セリグMLBコミッショナーも「私は古いタイプだから」とコメントし、基本的に反対の立場であることを表明している。特に判定の多くに導入することはやはり試合の流れを悪くすることの懸念から断固反対のようだ。

 実際もしストライク判定をビデオ等で正確に行うと、現在の判定とは大きく異なるものになるという話もある。何でも機械的に判定スルとスポーツとしての根幹を揺るがす可能性まで出るのだ。

 ただ現在はテレビで簡単にスロー映像が流れる時代でもある。いつもまでも人の目だけで良いというのにも無理が出ているのも事実だ。

 本塁打判定だけに導入、というのもいろいろな考えのすりあわせの結果というわけだ。果たして今回の導入がどんな新しいMLBのストーリーを産み出すだろうか、いろいろな意味で楽しみである。


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渡辺史敏「from New York」
渡辺史敏(わたなべ・ふみとし)
 1964年生まれ。兵庫県出身。ニューヨーク在住。明大卒業後、科学雑誌出版社勤務を経て、95年フリーランスとして渡米。  現在はMLBをはじめ、NFL、サッカーなどの米プロスポーツと、インターネット、TV、コンピュータなどのIT分野で取材・執筆活動を行っている。  独自の視点で米国メディアの報道を分析、スポーツビジネスのレポートなどに定評がある。

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