2009年08月04日
第233幕 お金を出して見る価値のある選手
メジャーリーグにはチームの勝敗に関係なく「あの選手のプレー(技)が見たい」と思わせる特別な選手がいる。その1人がレンジャーズのオマー・ビスケル内野手だ。華麗な守備を誇り、これまでゴールドグラブ賞に選出されること11度。だが、メジャー球界を代表するスーパースターも21年目となる今季は力の衰えから、春キャンプはマイナーの招待選手からのスタートを余儀なくされた。
開幕ロースターには残ったものの、同じベネズエラ出身の遊撃手エルビス・アンドラス(20)の台頭が目立ち、シーズン当初からショートのスポットを明け渡さなければならなかった。10年に1人出るかでないかという逸材のアンドラスを育てるため、レンジャーズはビスケルに彼の教育係としての役割も依頼したのだ。若い選手にポジションを明け渡すのは臍をかむような思いもあったが、それでもビスケルは快く引き受け指導を続けてきた。
結果的に今季のビスケルはアンドラスが試合に出ない日のバックアップ選手となった。レンジャーズの首脳陣も何とかビスケルのプレーを生かそうと考えた結果「二塁の守備」案が浮上した。しかし、そこにもイアン・キンスラーという不動の二塁手がいて、しかもビスケルはそれまでたった2度しか守ったことがない守備位置だった。1999年インディアンズ時代以来の二塁守備に「守るのが怖い」と珍しく名手は弱音を吐いていた。
しかし、そうも言ってはいられない。キンスラーが故障者リスト入りしたため、このところ二塁を守り続け、時にはマイケル・ヤングに変わって三塁の守備にも入っている。慣れない二塁守備に加え、初めての三塁守備。それらを黙々とこなす大ベテランの姿は、若い選手たちのこれ以上ないお手本になっている。打力に衰えが見え始めたため出場機会もめっきり減ってきたが、華麗で老獪な守備は42歳になった今もなお健在で、依然として「お金を出して見る価値」を見せつけている。
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- 鉄矢多美子(てつや・たみこ)
- 福岡県に生まれる。成城大在学中から、硬式野球部のマネジャーを務めるかたわら、ウグイス嬢の道に。1977年にロッテ・オリオンズ球団(現在の千葉ロッテ・マリーンズ)に入社して、ウグイス嬢と広報担当を兼務。87年12月からフリーに。 野球のあるとこどこまでも、の精神で、日本国内はもとより、アメリカ大リーグをはじめ、キューバ、ドミニカ共和国、プエルトリコなどに足繁く通う。将来は野球をモチーフにした一大スペクタル小説を書くのが夢。著書は「サミー・ソーサ 心はいつもホームラン」(集英社インターナショナル)、「もっとカゲキにプロ野球」(講談社)、「素顔の野茂英雄」(小学館)、「熱球伝説」(岩波書店)。
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