2009年07月21日
第231幕 山下大輔氏57歳の初体験・・・その1
アリゾナ州グレンデール。気温46度。日本では体感したことがない「刺すような暑さ」の中、その人はルーキーリーグに所属する若い選手たちを相手に、黙々と打撃投手を務めていた。午後5時、そろそろ日差しが西に傾こうかという時間になっても、暑さは一向に容赦しない。若い選手相手に20分ほど投げ続けた後、マウンドを降りてくると頭には粒のような汗が光っていた。

※ロッカールームでユニホームを広げる山下大輔氏
「いや~。僕には(汗を)遮るものがないんでねえ」。頭の汗を拭き拭き、いきなり自分でギャグを飛ばす。今季、ドジャースのマイナーリーグ育成コーチに就任した山下大輔氏(元横浜ベイスターズ監督、日刊スポーツ評論家)である。真夏のアリゾナは、高温と1ケタ代の湿度のダブルパンチで、少し動いただけでも体力を消耗する。今年57歳の体には正直こたえる。
体力的なものと酷暑の中での打撃投手が務まるかどうか、不安はあった。1カ月ほど徐々に体を慣らしていったところ意外にいけることがわかり、今ではなくてはならない「投手」になっている。担当は内野守備コーチだが、そうして打撃投手を務めていると、選手の素質なども見抜くことができる。正直、あちこち体に張りは出るが、それ以上にやりがいも感じている。
リハビリのため、上のクラスから降りてきている選手のためにも、早出をしてノックバットを握っている。日本での実績などを知っている選手たちは、そんな山下コーチに対して一応に尊敬のまなざしを向ける。これまで大雑把な野球しかやってきていない彼らにとって「いろいろな角度から丁寧に指導してくれるからとてもためになってありがたい」という声が上がっている。
4勤1休のペースだが、休日にリハビリの選手たちがやって来れば休みは返上。それでも嬉々としてノックバットを握り、打撃投手を買って出る。次の時代の選手を育てる喜びと充実感を感じながら、これまで彼の野球人生にはなかった「初体験」が続く。真夏の砂漠のド真ん中で、文字通り野球漬けの日々を送っている。(つづく)
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- 鉄矢多美子(てつや・たみこ)
- 福岡県に生まれる。成城大在学中から、硬式野球部のマネジャーを務めるかたわら、ウグイス嬢の道に。1977年にロッテ・オリオンズ球団(現在の千葉ロッテ・マリーンズ)に入社して、ウグイス嬢と広報担当を兼務。87年12月からフリーに。 野球のあるとこどこまでも、の精神で、日本国内はもとより、アメリカ大リーグをはじめ、キューバ、ドミニカ共和国、プエルトリコなどに足繁く通う。将来は野球をモチーフにした一大スペクタル小説を書くのが夢。著書は「サミー・ソーサ 心はいつもホームラン」(集英社インターナショナル)、「もっとカゲキにプロ野球」(講談社)、「素顔の野茂英雄」(小学館)、「熱球伝説」(岩波書店)。
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