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2009年06月08日

第229幕 ランディ・ジョンソン300勝・取材顛末記

 ランディ・ジョンソンが300勝を達成した。

 4月中旬、この300勝達成に備え、ジョンソンの生まれ故郷近くにある母校リバモア・ハイスクールの野球部をのぞいてきた。高校時代の最後の試合で完全試合を達成したというランディにとっては思い出深い場所であるはずだ。日本の高校野球の事例を考えた時、事前アポなし取材は多少無謀感もあったが、行ってみると監督やスタッフの方々が「何でもやっていいよ」という雰囲気で、とてもカジュアルに対応してくれた。

 球場に隣接した野球部の部室は「ランディ・ジョンソン ベースボール・ファシリティー」と命名されており、中をのぞいてみると、運動クラブ部室にありがちな汗のにおいがツーンと鼻を突いてきた。クラブハウスの奥まった場所にも同じ名前が書かれてあり、彼らがいかに偉大な先輩を誇りに思っているかが伝わってきた。ここで過ごしたランディの若き日の姿を想像し、自分なりに思いをめぐらせていたその時、「事件」が起こった。

 部室の中にある監督室の扉の向こうから、マウンテンドッグ系の大型犬がいきなり2匹飛び出してきて、驚く筆者をなぎ倒し、ものすごい勢いでグラウンドに飛び出して行ったのだ。そういえば、この部室に入る前に「犬がいるから気をつけてね」といわれていたことを思いだしたのだが、人の背丈ほどの大型犬だとは思いもよらず、そのことさえ忘れかけていた時だった。

 2匹の大型犬は、解き放たれた嬉しさを爆発させ、野球場をところ狭しとかけめぐり、試合開始直前の静寂を完全に打ち破っていた。監督や野球部員が大型犬を捕まえようと、みんなで右往左往追いかけまわしている様子を目のあたりにし、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。2匹の犬は何とか「捕獲」され、無事試合も始まった。やれやれ…である。

 ところで、このときまでランディは卒業後30年近く、母校には1度も顔を出していなかったそうだ。ところが、その2週間後、何と突然母校に本人が現れ、1時間くらい野球部の連中と交流して行ったのだという。思えばその4月は2連敗からのスタートで、らしからぬ投球が続き、一部には「限界説」まで飛びかうようになっていた。おそらく…原点である母校に身を置くことで自分を見直すきっかけを掴んだのではないだろうか。

 この十数年、ランディの追っかけを敢行している筆者にとって、このマイルストーンはかなり嬉しかったのであるが、それよりあのリバモア高校の大型犬たちになぎ倒されそうになった恐怖がいまだトラウマになっていて、時折ランディと犬たちの姿がダブって見えるという取材後遺症も残っていたりする?

 ま、それはともかく、こうした周辺取材には表には出てこない思わぬ顛末記があったりするものなのだ。


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ガンちゃんのまいど!
鉄矢多美子(てつや・たみこ)
 福岡県に生まれる。成城大在学中から、硬式野球部のマネジャーを務めるかたわら、ウグイス嬢の道に。1977年にロッテ・オリオンズ球団(現在の千葉ロッテ・マリーンズ)に入社して、ウグイス嬢と広報担当を兼務。87年12月からフリーに。  野球のあるとこどこまでも、の精神で、日本国内はもとより、アメリカ大リーグをはじめ、キューバ、ドミニカ共和国、プエルトリコなどに足繁く通う。将来は野球をモチーフにした一大スペクタル小説を書くのが夢。著書は「サミー・ソーサ 心はいつもホームラン」(集英社インターナショナル)、「もっとカゲキにプロ野球」(講談社)、「素顔の野茂英雄」(小学館)、「熱球伝説」(岩波書店)。

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