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2009年04月27日

第226幕 サングラスに哺乳びん、キューバからの嬉しい便り

 日本中を感動と興奮のるつぼへ誘ったWBCから、はや1カ月がすぎた。メジャーから参加したイチロー、松坂、城島らがそろって故障者リスト入りするなど、改めていかに大きな代償と引き替えの「世界一」だったことかを思い知らされている。その後、傷ついた戦士たちの情報に触れるたびに、彼らがいかに精神的、肉体的に極限の戦いに挑んだのか。その「心意気」にはもう、ひれ伏すしかないと思った。

 そんな中、ちょっと嬉しいニュースが入ってきた。3月16日にサンディエゴで行われたキューバ戦で、城島の平凡なライトフライを、強い日差しに阻まれ二塁打にしてしまったあのプレー。その超本人であるアルフレッド・デスパイネ外野手が、帰国後キューバの国内リーグで打棒爆発、大活躍しているというのだ。

 WBC前の数字は57試合で本塁打16、打率3割5分7厘だったものが、帰国後26試合で15本塁打を放ち計31本に、打率も3割7分9厘まであげている。4月27日現在、合計84試合を消化し、本塁打1位、打率は6位につけている。「チームにサングラスが…ないんだ」。あの直後、宿舎に帰ってポツリと漏らした。その言葉にグサリと胸を刺された筆者は、思わずサングラスを買いに走った。

 聞けば、デスパイネが代表に招集された2月8日に長女のレイチェルちゃんが誕生したのだという。そのため初めて生まれた我が子の顔を見ることなく1カ月半以上も故郷を離れていた。アメリカに入ってからは外出もままならず、そんな中で新米パパらしく「哺乳びん」を探していた。キューバ国内にあるものは粗悪で熱湯で煮沸すると溶けてしまうらしい。

 それを聞いた筆者はまたそれを探しに走った。3本セットで12ドル。デスパイネはその哺乳びんを嬉しそうに抱きかかえて帰りのバスに乗り込んだ。頭にはいろいろな思いが凝縮されているであろうサングラスが乗っていた。事後の報道ではサングラスを持っていなかったことをおもしろおかしく伝えているものが多かったが、これは勝者として少し恥ずかしいことではないだろうかと思った。

 3月18日に準決勝で再び日本と相まみえた際、小笠原の飛球をセンターのヨエニス・セスペデスが捕り損ね、タイムリーエラーになった。彼もまた台湾でもらったというよれよれのグラブを使用していて、直前にグラブを修理する革紐を探していたことを思うと、やりきれない思いになった。もちろん、今回のキューバ戦の2試合は、あのようなプレーがなくとも完璧に日本が勝っていた。それだけに、せめて、同じ条件のもとで戦い、勝って欲しかったと思うのだ。

 さて、そのキューバでは5月3日でレギュラー戦が終了する。デスパイネの本塁打王は確実、そして現在ミッチェル・エンリケスが4割1厘で打率部門2位、ユリエスキー・グリエルが3割9分3厘で3位につけ、激しい首位打者争いを演じている。WBCに参加し、傷ついた戦士たちが「悪夢」を振り払い、母国ではつらつとプレーしている様子を耳にした時、なぜか心地よい気分になった。
 (記録はいずれも現地4月26日終了現在)


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ガンちゃんのまいど!
鉄矢多美子(てつや・たみこ)
 福岡県に生まれる。成城大在学中から、硬式野球部のマネジャーを務めるかたわら、ウグイス嬢の道に。1977年にロッテ・オリオンズ球団(現在の千葉ロッテ・マリーンズ)に入社して、ウグイス嬢と広報担当を兼務。87年12月からフリーに。  野球のあるとこどこまでも、の精神で、日本国内はもとより、アメリカ大リーグをはじめ、キューバ、ドミニカ共和国、プエルトリコなどに足繁く通う。将来は野球をモチーフにした一大スペクタル小説を書くのが夢。著書は「サミー・ソーサ 心はいつもホームラン」(集英社インターナショナル)、「もっとカゲキにプロ野球」(講談社)、「素顔の野茂英雄」(小学館)、「熱球伝説」(岩波書店)。

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