2009年04月02日
第223幕 勃発した?ダルビッシュ争奪戦
WBC終了直後からMLBのキャンプをまわっているが、各方面から「ダルビッシュ」という名前が頻繁に聞こえてくる。日本や韓国に比べ、どちらかといえば冷静な報道に終始したアメリカだったが、決勝戦のダルビッシュの投球に強烈なインパクトを受けた選手、スカウト、監督、コーチ、野球ファン、キャスターらあらゆるジャンルの人々が「日本のクローザー」に関して大きな関心を寄せているのだ。
ドジャースのマニー・ラミレスは開口一番「彼の投球は信じられない(ほどすごかった)。信じられなかったよ」と繰り返し、ESPNのキャスター、ジョニー・ミラーは「ちょっと荒さはあったが、力強くてとても魅力的な投手だった」と高評価。マリナーズのケン・グリフィーJrもまた決勝戦の終盤、クライマックスの舞台に立つ若者の投球を見て「もし、彼が味方のチームにいるのなら嬉しいけど、相手チームの投手だったらいやだね」と警戒心まで覗かせる。
外国人選手にとって日本人選手(ダルビッシュは外国名ではあるが)の名前はなかなか覚えにくいらしく、当初は「ホラ、あの最後に出てきた若い投手」「あの、背が高くてすごい球投げる若者」などと言っていたMLBの選手たちも、今ではちゃんと「ダルビッシュ」と言えるようになってきた。それだけ彼のパフォーマンスが波紋を呼び、選手間でも話題にのぼっているのであろう。
WBCのアメリカ代表で出場したエンンジェルスのスコット・シールズ投手はチームに戻るなり、首脳陣に「ダルビッシュを獲得するべきだ」と進言した。筆者にも「彼はいつになったらこっちに来る資格が取れるの? ポスティングとかいうシステムもあるんだよね? その時には絶対エンジェルスに来てほしい」と、選手自らが熱心に勧誘に乗り出すという異例の事態まで引き起こしている。
MVPに輝いた松坂、決勝戦で大仕事をやってのけたイチローなど、日本が誇るバリバリのメジャーリーガーたちの名前はダルビッシュの話題の影に隠れて、ほとんど出てこないという不思議な現象まで起こっているが、それほど広く衝撃を与えただけのことはあって、水面下ではすでにダルビッシュ争奪戦が繰り広げられているとも言われている。
ともあれ、話題の中心人物、ダルビッシュが将来メジャーのユニフォームに袖を通すのか否か。それは野球の神様だけが知っている。
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- 鉄矢多美子(てつや・たみこ)
- 福岡県に生まれる。成城大在学中から、硬式野球部のマネジャーを務めるかたわら、ウグイス嬢の道に。1977年にロッテ・オリオンズ球団(現在の千葉ロッテ・マリーンズ)に入社して、ウグイス嬢と広報担当を兼務。87年12月からフリーに。 野球のあるとこどこまでも、の精神で、日本国内はもとより、アメリカ大リーグをはじめ、キューバ、ドミニカ共和国、プエルトリコなどに足繁く通う。将来は野球をモチーフにした一大スペクタル小説を書くのが夢。著書は「サミー・ソーサ 心はいつもホームラン」(集英社インターナショナル)、「もっとカゲキにプロ野球」(講談社)、「素顔の野茂英雄」(小学館)、「熱球伝説」(岩波書店)。
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