2009年02月24日
第221幕 WBC直前に潜入したキューバでの出来事
WBCの日本代表メンバーが決まった。では、日本のライバルとなりそうな他の強豪国はどんな状況なのか? と、組み合わせ表を見ていたら、やはり第2ラウンドで激突しそうなキューバが気になった。そこで、先日ドミニカ共和国の取材ついでにキューバを訪ねることにし、ちゃっかり、かの地に潜入してきた。とはいえ、報道ビザをもっているわけではなく、あくまでもツーリスト。つまり観光客としての入国だった。
ところが、困ったことにこのワンフー観光客は、キューバの見どころなど全く興味がない。ただひたすらに、WBCに出そうな野球選手宅を訪問し、ちゃっかり関連インタビューもしてしまうという。それが筆者にとっての「観光」なのである。中でも絶対に押さえておきたかったのは、ナショナルチームで3番候補のユリエスキー・グリエルの家だった。
薄暗いホテルの部屋でキューバの地図を広げ、グリエル家までの距離を見ていたら、首都ハバナから450キロはありそうだ。往復900キロ。高速道路事情が決してよくないその道のりを1日で往復するのは容易なことではないとわかりながら、キューバに住む友人に強引に運転をお願いし、グリエル家を突撃することにしたのだった。
グリエルの住む町は、キューバ中西部ののんびりとした田園地帯。以前に何度か訪れたことがあるが、いつも彼の家の前を通り過ぎるだけだった。今回は図々しく上がりこみ、彼のお母さんに飲み物とおつまみまで出していただき、しかもWBCにかける彼の意気込みまで聞き出してきた。これは立派な取材行為であるが、立場上、あくまでもワンフー観光客というポリシーだけは保ち続けなければと心の中で葛藤が続いていた。
なぜなら、社会主義国家ではステートアマたる立場の選手たちに、外国人が無断で接近、しかも家を突撃するなどという行為は絶対に許されないし、もしそれがバレると、取調べを受けた上収監されることもあるのだ。だから、あくまでもワンフー観光客で通さなければならなかったのだが、思えばそんな観光客が国のトップ選手の家を突撃し、WBC関連の質問をするかどうかである。

それはさておき、グリエル家を訪ねたとき、かつてナショナルチームで活躍した国民的英雄の父・ルーデスもいた。彼は日本の社会人チームでもプレーしたことがあり、都市対抗でホームランもかっとばしている。そのとき、ワンフー観光客のレーダーが動いた。ルーデスは今回ナショナルチームの打撃コーチになるな…と。果たしてその予想はドンピシャだった。前回のWBCでは三振、北京五輪では併殺打で、いずれも最後の打者となり、どこかにトラウマを抱える息子のユリエスキーにとって、これほど心強いことはない。
グリエル家をあとにしたワンフー観光客は、そのまま帰るのがもったいなく思い、同じ街に住む、クリーンナップ候補のフデレリック・セペダ家も突撃し、その後、ハバナへの帰途についた。もっと白状するなら、その前日、4番候補のアレクサンダー・マジェタの家を訪ね、そのあと国際保養地のバラデロでチームのキャプテン格ミッチェル・エンリケスと食事をした。
どこまでも懲りないワンフー観光客であるが、筆者にとってはこれがキューバ観光の真髄という位置づけであるのだから、多少? の違反はお許し願いたい。で、このような行動に対し、今のところキューバ政府からお咎めがないことも補足しておきたい。
※写真はキューバの自宅でWBCに向け準備をするグリエル親子
※日記を書く方法はこちらで紹介しています。
この記事には全0件の日記があります。
- 鉄矢多美子(てつや・たみこ)
- 福岡県に生まれる。成城大在学中から、硬式野球部のマネジャーを務めるかたわら、ウグイス嬢の道に。1977年にロッテ・オリオンズ球団(現在の千葉ロッテ・マリーンズ)に入社して、ウグイス嬢と広報担当を兼務。87年12月からフリーに。 野球のあるとこどこまでも、の精神で、日本国内はもとより、アメリカ大リーグをはじめ、キューバ、ドミニカ共和国、プエルトリコなどに足繁く通う。将来は野球をモチーフにした一大スペクタル小説を書くのが夢。著書は「サミー・ソーサ 心はいつもホームラン」(集英社インターナショナル)、「もっとカゲキにプロ野球」(講談社)、「素顔の野茂英雄」(小学館)、「熱球伝説」(岩波書店)。
最近のエントリー
- ラミレスはFAせずドジャースに残留 [8日09:52]
- ロイヤルズが薮田と契約更新せず [8日09:50]
- 松井去就は白紙を強調「今は何もない」
[8日09:49] - ヤンキース王建民退団も、FA移籍か [8日09:23]
- 黒田が“がん撲滅”に10万ドル寄付 [8日08:22]
- Wシリーズ大活躍松井、ヤ軍波乱必至 (渡辺史敏の「from New York」) [11月5日]
- 第241幕 ハロウィーンの夜、フィリーズファンのため息 (鉄矢多美子「Field of Dreams」) [11月1日]
- 主砲対決、経験の差でハワードか (渡辺史敏の「from New York」) [10月29日]
- 東海岸対決となりそうだが果たして… (渡辺史敏の「from New York」) [10月22日]
- 第240幕 亡き僚友とともに戦うエンゼルス (鉄矢多美子「Field of Dreams」) [10月20日]