2009年02月13日
第220幕 野球少年まで…薬物問題で揺れるドミニカ共和国
ドミニカ共和国で取材中の筆者は、このところ立て続けにショキングなニュースに直面している。1つはアレックス・ロドリゲスのステロイド使用問題で、本人が過去に使用したことを認めるコメントをしたことだ。以来、彼の写真入り記事が立て続けに3日、新聞のスポーツ面1面を飾った。
A・RODショックはその後も延々と続く様相を呈していたのだが、今度は同国出身のミゲール・テハダがオークランド・アスレティックス時代に禁止薬物を使用していたにもかかわらず、偽証していたことが発覚。地元紙は大きく「CULPABLE」(罪人)と見出しをとり、騒ぎはテハダのほうに飛び火した。
おりしも、2月11日にはWBCドミニカ共和国のキャプテンを、モイセス・アルーが務めることが発表され、本人やスポーツ大臣など臨席のもと、大がかりな記者発表が行われて「さあ、これから」と息が上がったばかりだった。WBCには史上最強チームを送り出すはずだったドミニカ共和国。候補に挙がっているスーパースターたちの相次ぐ不祥事発覚で国中に衝撃が走っている。
ステロイドと言えば、数日前、サンペドロ・デ・マコリスの球場で練習していた15~17歳くらいの少年たちが、注射器を手に何やら話をしている場面に遭遇した。これからメジャーリーグの球団が持つアカデミーのテストを受けるということだったが、彼らの手に持っているのは、どう見てもステロイドの溶液の入った注射器だった。
しかも、全くコソコソした様子はなく、注射器を仲間の間で堂々と持ちまわしていた。考えてみれば、彼らにとって、アカデミーのテストに受かる、受からないは死活問題。1人の少年の肩に家族全員の生活がかかっているのだ。そこには、この時点から薬の力を借りて、競争に打ち勝たなければならない少年たちの悲劇が潜んでいる。
もちろん、薬物などに染まることなく、まっとうに取り組んでいる選手がほとんどだ。だが、少年たちからメジャーのトップスター選手まで、この1週間で見聞きした現実は、あまりにも衝撃的で、歪められた競争、その負の遺産を突き付けられた思いがした。
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- 鉄矢多美子(てつや・たみこ)
- 福岡県に生まれる。成城大在学中から、硬式野球部のマネジャーを務めるかたわら、ウグイス嬢の道に。1977年にロッテ・オリオンズ球団(現在の千葉ロッテ・マリーンズ)に入社して、ウグイス嬢と広報担当を兼務。87年12月からフリーに。 野球のあるとこどこまでも、の精神で、日本国内はもとより、アメリカ大リーグをはじめ、キューバ、ドミニカ共和国、プエルトリコなどに足繁く通う。将来は野球をモチーフにした一大スペクタル小説を書くのが夢。著書は「サミー・ソーサ 心はいつもホームラン」(集英社インターナショナル)、「もっとカゲキにプロ野球」(講談社)、「素顔の野茂英雄」(小学館)、「熱球伝説」(岩波書店)。
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