2008年09月22日
第205幕 レイズ躍進の要因は「お金で買えない何か」
ヤンキースのA・ロッドとジーター、2選手分の年俸で、球団全体がまかなえるという、そんなスモールマーケットのタンパベイ・レイズが球団創設11年目で悲願のポストシーズン進出を果たした。
ヤンキース、レッドソックスという、いわばお金にものを言わせて選手集めをする傾向にあるチームとは対照的に、球団バジェットはメジャー30球団中の29位。だが「このチームにはお金で買えない何かがある」。こんな言葉が選手の口から聞こえてくる。
9月5日にメジャーデビューを飾り、新人離れした活躍を続けているフェルナンド・ペレスが言う。「このチームを構成しているのは能力とチームワーク。安定したピッチング。それにだれも飛び出ない。スーパースターのみの活躍を期待されているわけでもない。みんな一緒。じゃまな性格の持ち主もいない。フィールドからおりても、みんな普段と同じ。ここでプレーできることは本当に心地いい」。新人のこの言葉が、今のレイズのすべてを言い表しているのではないだろうか。

どこかで聞いたような選手たちのセリフ、どこかで感じ取ったような家族的な雰囲気のクラブハウス…。それは、同じスモールマーケットのミネソタ・ツインズのそれとそっくりだ。多くの選手たちがマイナー時代から「同じ釜の飯」を食べ、まるで家族のように育ってきただけに、メジャーに昇格してからも仲がいい。お互いの苦労を知っているから相手を思いやれるし、他球団からの移籍選手との協調性を欠くこともない。「チームワーク」や「絆」はこうしたところから生まれてくる。
「こんなに気が落ち着くクラブハウスがあるのだろうか。ルーキーもベテランもすぐに家族の一員になれる」。自宅を出て球団にくればそこには「もう1つの家」クラブハウスがあり、大勢の家族でにぎわっている。その大勢の家族は我々のような来客(メディア)までも快く受け入れてくれるのだ。球団創設からこれまでの10シーズンはレイズと同じディビジョンのヤンキース、レッドソックスという、いわゆる金満球団の前に撃沈してきたが、今季は「絆」が「お金」に打ち勝ったと言えるのではないだろうか。
「お金で買えない何か」。口ぐちにそういうレイズの選手たちは、お金より大切なものがあることをしっかりと証明して見せた。
※写真はフェルナンド・ペレス(07年撮影・加藤哉)
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- 鉄矢多美子(てつや・たみこ)
- 福岡県に生まれる。成城大在学中から、硬式野球部のマネジャーを務めるかたわら、ウグイス嬢の道に。1977年にロッテ・オリオンズ球団(現在の千葉ロッテ・マリーンズ)に入社して、ウグイス嬢と広報担当を兼務。87年12月からフリーに。 野球のあるとこどこまでも、の精神で、日本国内はもとより、アメリカ大リーグをはじめ、キューバ、ドミニカ共和国、プエルトリコなどに足繁く通う。将来は野球をモチーフにした一大スペクタル小説を書くのが夢。著書は「サミー・ソーサ 心はいつもホームラン」(集英社インターナショナル)、「もっとカゲキにプロ野球」(講談社)、「素顔の野茂英雄」(小学館)、「熱球伝説」(岩波書店)。
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