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2008年09月11日

第204幕 女の勘的中!大ブレークの新人サンドバル

 マイナーリーグを歩いていると「この選手はきっとメジャーでブレークする」、そんな胸騒ぎを覚える選手に遭遇することがある。筆者は野球の技量を見る特別な目を持っているわけではないから、選手のスキルでそれを判断することはできない。では、何を基準に判断しているのかと言われれば、根拠のない「直感」つまり「女の勘」だけだ。当然ながらそれはアテにはならない。

 だが、今季はその根拠のない直感が大当たりした。8月14日にメジャービューを果たしたジャイアンツのパブロ・サンドバル(22)だ。春キャンプで見かけた時から、わけもなく胸騒ぎを覚えた若者だったが、早々にマイナー送りになり、シーズン当初はサンノゼ・ジャイアンツ(1A)で迎えた。シーズン開始後、彼の様子を覗きに行こうと思った時には、すでにサンノゼからコネチカット・ディフェンダーズ(2A)に昇格していた。

 このあたりから胸騒ぎも尋常ではなくなり、思い切ってコネティカットに飛ぶことにした。「あれ~。何でこんなところまで?」。7月末、いきなりの訪問にサンドバルは首をかしげて不思議がった。2Aに合流するなり4番を任され、そこでも打棒爆発。「今季中にメジャーに行くのではないかと思ったから、マイナー時代の姿を目に焼き付けておこうと思って」と言うと「今季は無理かもしれないけど、来季中に何とかメジャーリーガーと呼ばれるようになりたい」と言っていた。

 彼を訪ねた理由はもうひとつあった。スイッチヒッターである上に、左右両手で投げる特技を持っていて、いつかそれを実際に見てみたいと思っていたのだ。テレビの企画と相まって、それを実演してもらうことにした。ホームプレートから二塁まで、左右両方で投げても何ら変わることなく正確に送球できた。それを目の当たりにして驚く筆者をよそに「子供のころ投手をしていて、左右で投げていたから、両手で投げるのは全く問題ないんだ」と涼しい顔。

 このとき、2Aのフィゲロア監督に「メジャーに一番近い選手は?」と聞くと、真っ先にサンドバルの名前を挙げた。3Aを飛び越して彼がメジャーに昇格したのはその3週間後だった。マイナーでは主に三塁と一塁を守っていたが、昨年、捕手にコンバートされた。ジャイアンツでは正捕手モリーナの代わりとしてマスクをかぶることもあるが、そのリードぶりはとても2年足らずの経験しかないとは思えない堂々たるものだ。メジャーでの打撃も、8月14日から9月10日(日本時間11日)まで24試合に出場し91打数30安打3割3分、本塁打2、打点14と新人らしからぬ活躍を見せている。

 春キャンプで「こいつは何か持っている」という胸騒ぎを覚えて以来、あれよ、あれよという間に1Aから一気にメジャーへの階段を駆け上っていったサンドバル。女の勘が的中したことに加え、そのあまりの速い昇格のテンポについていけず、胸騒ぎを通り越し、息切れを起こしそうな興奮にさえとらわれている。


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ガンちゃんのまいど!
鉄矢多美子(てつや・たみこ)
 福岡県に生まれる。成城大在学中から、硬式野球部のマネジャーを務めるかたわら、ウグイス嬢の道に。1977年にロッテ・オリオンズ球団(現在の千葉ロッテ・マリーンズ)に入社して、ウグイス嬢と広報担当を兼務。87年12月からフリーに。  野球のあるとこどこまでも、の精神で、日本国内はもとより、アメリカ大リーグをはじめ、キューバ、ドミニカ共和国、プエルトリコなどに足繁く通う。将来は野球をモチーフにした一大スペクタル小説を書くのが夢。著書は「サミー・ソーサ 心はいつもホームラン」(集英社インターナショナル)、「もっとカゲキにプロ野球」(講談社)、「素顔の野茂英雄」(小学館)、「熱球伝説」(岩波書店)。

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