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2008年07月18日

第198幕 野茂英雄 引退の報に触れて

 オランダで行われたハーレム大会の取材を終え、北極圏を越えてアメリカに入ったばかりのタイミングで「野茂引退」の報に触れた。くしくもオランダでは、キューバ・ナショナルチームの監督アントニオ・パチェコ、打撃コーチのオレステス・キンデランの2人から「今、野茂はどうしてるの?」と聞かれたばかりだった。昨秋ベネズエラのウインターリーグに参加し、今季はメジャーを目指していたことなど、今なお現役続行に思いをつないでいるという話をしたばかりだった。

 キューバの通算安打記録を持つパチェーコと、本塁打記録を持つキンデラン。加えて3冠王のリナレスというキューバが世界最強街道を突っ走っていた時代の、恐怖のクリーンナップにとって、これほど深く彼らの胸に刻まれている投手はいないのだという。理由は変則投法やフォークだけではない。世界が恐れる強打者たちに、どんなときにも真っ向から勝負を挑みかけてきた、その気概と気迫に彼らは魅了されていたのだ。

 現在のキューバ・ナショナルチームの選手たちに、オリンピックがらみで「日本の選手で要注意な選手は?」を聞いた時も、約半数ほどが野茂の名前を挙げてきた。オランダ・ナショナルチームの選手たちの数人からも同様の答えが返ってきた。野茂と対戦した経験を持たない彼らの中に、それほど「NOMO」という投手名が深く、鮮烈に刻まれ続けていることに、今さらながら驚いた。

 あのバリー・ボンズも同様で、野茂とイチローに関する質問には、とたんに饒舌に答えるが、他の日本人選手に関しては「よくわからない」「まあ、いいんじゃない?」など適当なコメントしかせず、あまり関心を示すことはなかった。野茂がメジャーで最初にバッテリーを組んだマイク・ピアザ(今年引退)も「彼のボールを受けるのはすごく楽しかった」と常々語っており、それほどメジャーの「猛者」たちの心を突き動かしてきた。

 2001年のレッドソックスの春キャンプの際、だれもいなくなったロッカールームで野茂にインタビューさせてもらったことがある。そのとき「日本は野球選手の受け皿がなさすぎる。受け皿を作り、底辺を拡充しなければ野球がダメになる」と日本の現状を憂い、将来を危惧していた。その2年後「NOMOベースボルクラブ」を立ち上げ、自ら受け皿を作って選手たちにプレーする場を与えた。

 野球で成功を収めた選手が、次に何をするべきかを的確に指し示してくれたのだ。

 自分だけ成功を収めて安穏としているのではなく、後進に対する受け皿作りや、野球の拡充など、常に将来を見据えた観点から、その思いを1つ1つ実現してきた。そうしていながら、自らのプレーに対する情熱も燃やし続けてきたのだ。そんな「野球に対する一徹な思い」が、世界中の選手やファンの心を捉えて離さないのだと思う。現役生活には終止符を打ったが、野茂の野球に対する情熱は、この先も決して途切れることはない。


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ガンちゃんのまいど!
鉄矢多美子(てつや・たみこ)
 福岡県に生まれる。成城大在学中から、硬式野球部のマネジャーを務めるかたわら、ウグイス嬢の道に。1977年にロッテ・オリオンズ球団(現在の千葉ロッテ・マリーンズ)に入社して、ウグイス嬢と広報担当を兼務。87年12月からフリーに。  野球のあるとこどこまでも、の精神で、日本国内はもとより、アメリカ大リーグをはじめ、キューバ、ドミニカ共和国、プエルトリコなどに足繁く通う。将来は野球をモチーフにした一大スペクタル小説を書くのが夢。著書は「サミー・ソーサ 心はいつもホームラン」(集英社インターナショナル)、「もっとカゲキにプロ野球」(講談社)、「素顔の野茂英雄」(小学館)、「熱球伝説」(岩波書店)。

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