2008年06月11日
第193幕 「主役」が去ったキャンプ地は今
このところアリゾナは40度を越える日が多くなった。春には選手、マスコミ、ファンがやってきて賑わいを見せていたキャンプ地は今、まるで灼熱の太陽を避けるかのように人々が去り、閑散としている。キャンプ中盤から終盤にカットされ、マイナー行きを命じられた選手たちのため息が、静寂の中、どこかから聞こえてきそうな、そんな幻想にさえとらわれる。
数カ月前の人の往来が消えた今、その地で北京五輪に向けて、中国ナショナルチームがキャンプを張っている。燃えるような暑さの中、中国の選手たちは元気に密度の濃い練習を続けている。10日に行われたカンザスシティーのルーキー級との試合では8対2と快勝。ラフィーバー監督は試合後「いくつかの問題点はあったが、いたるところに目を見張る進歩が見られた」とナインを鼓舞する訓示をしていた。
ところで、今回中国チームが使用しているのはピオリアにあるパドレスのキャンプ施設で、メジャーのクラブハウスとトレーニング設備をそのまま丸ごと利用している。監督室やクラブハウス、その周辺を出入りするたびに、これまでの春季キャンプの出来事や、パドレスに入団した当時の大塚晶則投手を囲み、青々とした芝生の上でインタビューをさせてもらったことなどがフィードバックしてくる。
練習試合が行われたサープライズのキャンプ地では、この春、メジャー復帰を目指していた野茂英雄投手の姿があった…。黙々と走り込みを行っていたその練習場に今は人影もない。フォールリーグが始まる10月までは、わずかなルーキー級の選手やリハビリを行っている選手たちの往来が見られるだけで、今、この地で「主役」を張っているのはギラギラと照りつける真夏の太陽だ。
本来の「主役」たちが去り、夏を迎えたスプリングトレーニングの地は、心なしか寂しげな表情をのぞかせ、そこには静寂の時が流れるばかりだった。
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- 鉄矢多美子(てつや・たみこ)
- 福岡県に生まれる。成城大在学中から、硬式野球部のマネジャーを務めるかたわら、ウグイス嬢の道に。1977年にロッテ・オリオンズ球団(現在の千葉ロッテ・マリーンズ)に入社して、ウグイス嬢と広報担当を兼務。87年12月からフリーに。 野球のあるとこどこまでも、の精神で、日本国内はもとより、アメリカ大リーグをはじめ、キューバ、ドミニカ共和国、プエルトリコなどに足繁く通う。将来は野球をモチーフにした一大スペクタル小説を書くのが夢。著書は「サミー・ソーサ 心はいつもホームラン」(集英社インターナショナル)、「もっとカゲキにプロ野球」(講談社)、「素顔の野茂英雄」(小学館)、「熱球伝説」(岩波書店)。
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