2008年05月26日
第191幕 野村ID野球が浸透するキューバ野球
このところ日中は35度を越える猛暑が続くハバナ。そんな中で、北京オリンピックに向けたキューバナショナルチームのプレセレクションが行われている。今回キューバチームの指揮を執るのは、シダックスでプレーをしたこともあるアントニオ・パチェーコ氏。そのパチェーコ氏が「シダックス時代の野村監督(現楽天監督)に、学ぶところが多かった」と話した。
オリンピック候補に選ばれた43名が、暑さを避けるために野手陣は午前8時すぎから、投手陣は午後4時すぎからとふた手に分かれて練習を行っている。その彼らの動きを鋭い目つきで追っているパチェーコ監督。今季のキューバ国内シリーズでも指揮を執り、ぶっちぎりの強さで自チームのサンチャゴ・デ・キューバを国内チャンピオンに導いて、指導者としても手腕を買われている。
キューバはWBCで日本に敗れ優勝を逃した。しかも、野球競技は今度の北京が最後といわれている。野球が国技であるキューバからすれば、昨今の事情からみても、このオリンピックでは是が非でも「金」を取らなければならない状況に置かれている。海外からのメディアも政府レベルでビザの発給を止め、取材陣を完全にシャットアウトするなどして、臨戦態勢を敷いている。そうした中「切り札」として起用したのが、パチェーコ監督だった。
「世界一」という宿命を背負ったパチェーコ監督だが、常に野村監督のもとでプレーし、学んだことを反芻しているのだという。「頭をよく使って、相手のことをよく観察し、あるときは逆の方法を想定するなど、実に多くのことを学んだ。かけがえのない時間だった」。そんなことを語るとき、遠い目をしてシダックス時代を懐かしんでいるように見えた。
「野村監督との出会いが、自分を指導者として育ててくれた」と言ってはばからないパチェーコ監督。日本にとっては強敵のキューバだが、パチェーコ監督は金メダルを取って自分の指揮官としての裁量を野村監督に見てもらいたいと考えているようだ。キューバ野球の中に息づく野村ID野球。その浸透度はかなり深いように見えた。
(キューバ・ハバナにて)
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- 鉄矢多美子(てつや・たみこ)
- 福岡県に生まれる。成城大在学中から、硬式野球部のマネジャーを務めるかたわら、ウグイス嬢の道に。1977年にロッテ・オリオンズ球団(現在の千葉ロッテ・マリーンズ)に入社して、ウグイス嬢と広報担当を兼務。87年12月からフリーに。 野球のあるとこどこまでも、の精神で、日本国内はもとより、アメリカ大リーグをはじめ、キューバ、ドミニカ共和国、プエルトリコなどに足繁く通う。将来は野球をモチーフにした一大スペクタル小説を書くのが夢。著書は「サミー・ソーサ 心はいつもホームラン」(集英社インターナショナル)、「もっとカゲキにプロ野球」(講談社)、「素顔の野茂英雄」(小学館)、「熱球伝説」(岩波書店)。
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