清原 西武ライオンズ特集
西武ライオンズ 復刻ニュース
1996年11月21日
清原巨人入り決断、長嶋監督のラブコールにグラリ
フリーエージェント宣言した清原和博内野手(29)が巨人入りを決断した。清原は20日夜、都内ホテルで巨人と2度目の交渉を行った。交渉に初めて出馬した長嶋茂雄監督(60)の「思い切って僕の胸に飛び込んで来てほしい」の誘いに、大きく心が動いた。22日、大阪で阪神との2度目の交渉を控えているため、即答は避けたが、「気持ちはスッキリした」と、巨人入りに傾いた胸の内をのぞかせた。22日には阪神を正式に断り、事実上「巨人清原」の誕生となる。
長嶋監督の殺し文句がすべてだった。「思い切って僕の胸に飛び込んで来てほしい」。このひとことで、清原のハートがジワジワと熱くなる。額には汗の玉が浮かぶ。あれから11年。清原の「巨人一本」の思いが、やっと実った瞬間だった。あこがれの人・長嶋監督の直接出馬、巨人があらためて出してきた、3年契約・年俸3億4500万円(いずれも推定)の最大級の評価。一塁確約……。もう清原の心からわだかまりは消えていた。
悩み、苦しんだ8日間だった。今月13日の第1回交渉。2年契約で3億円前後の低い提示。会見場も設置せず、「落合解雇」も耳にして、心は乱れた。阪神の誠意ある交渉と比べた時、地元大阪の球団へ移籍することも清原の脳裏をよぎった。そんな暗雲を振り払うように、長嶋監督が清原に訴えかけたのだった。
球団側も、11年前に巨人がドラフト指名を公言しながら、桑田に切り替えたことを正式に謝罪した。清原は「代表からおわびされまして、気持ちというかスッキリしたというか……。どう表現していいのか分かりませんが」と感激に浸っていた。
話すほどに不信の念は薄れてゆく。「気持ちの変化? ありましたね。一時は感情的になったけど」。清原は、巨人一辺倒の気持ちが揺れたことを隠そうとはしなかった。頭がパニックになるほど悩み、考え抜いたことも明かした。「今回、巨人さんと話をしていい印象を持ったのは確かです」とまで言い切った。
長嶋監督直々の出馬だけに、背番号3禅譲の話が出ることも予想されたが、それを持ち出すまでもなく、清原の心は巨人に傾いていた。長嶋監督は言った。「夢のある、期待の膨らむ話をした。ある程度、巨人軍の要請は理解していただけたと思う」。十分獲得の手ごたえはあった、そう思わせる感想だった。
この日は11年前のドラフトの日。「11月20日は僕のドラフト会議があった日で……。12年前のことが頭の中を巡りまして……。12年前の今日はこういう会見をするとは夢にも思いませんでした。偶然なのか分かりませんが……」。年数を間違えるほど、金びょうぶの前に座った清原は何度も言葉を詰まらせた。
もう悩むことはなくなった。清原は誠意ある対応を見せた阪神の立場も考慮して22日、大阪まで出向いて交渉に臨むが、これは「お断り」の場になる。「近日中に結論を出したい。ずるずるやるのは好きじゃない」。
22日、阪神の入団要請を断って「巨人清原」が誕生する。
★両者のやり取り
午後7時5分。清原は巨人長嶋監督らが待つ、都内ホテルの35階にあるスイートルームに入っていった。交渉に先立ち、長嶋監督と握手する。両者とも満面の笑み。それはまるで入団発表の席であるかのようだった――。
そして交渉が始まる(以下は、両者の記者会見をもとに想像した長嶋監督と清原とのやりとりを再現)。
長嶋 将来、君には巨人の中心を担う役割を果たしてほしいんです。今日は誠意を持って話したいんです。
清原 はい。
長嶋 お互いに野球人同士。ジャイアンツの状況、わがチームの戦力も分かってくれているだろうし、僕は率直にお話しします。君はキャリアがあるプレーヤーだし、わがチームの事情も知っているでしょ。君のポジションは一塁と考えています。
清原 はい。
長嶋 今は君も大変な時期でしょう。でも気持ちをしっかり持って。思い切って僕の胸に飛び込んで来てほしい。何かと雑音も聞こえてくるかもしれないけど……。
清原 どうもありがとうございます。そう言っていただけると、本当にうれしいです。この1週間、僕もいろいろと考えました。1週間がこんなにも長く、そして短く感じられたことはありません。頭の中がおかしくなるぐらい、いろんなことを考えたんです。
長嶋 そうでしょう、そうでしょう。こういう問題は推測、憶測、そういうものがあるからね。
清原 そうですね。一時、自分自身感情的になった部分もありました。でも、今日ですっきりしました。
(1996年11月21日付日刊スポーツ)
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