2009年10月01日
1軍デビューは-。
~阪神・蕭一傑投手~
ウエスタン・リーグの公式戦は終了した。直後のファーム。「ホッとひと息」と思われがちだが、とんでもない。鳴尾浜球場、私、ここ数日足を運んでいるが、いまだ熱い戦いが続いている。将来を見つめ、首脳陣へのアピールを心掛けて、手を抜くことなく頑張る若手がいる。また逆に、整理選手の色分けをする時期。線上にいる選手は生き残りをかけ、必死の形相で一投一打に全力を傾けている。練習試合とはいえ、各選手、息抜きはできない状況。ある意味、ペナントレース中にない異様な雰囲気さえ伝わってくる。プロの厳しさがそこにある。この戦いを乗り越えない限り1軍への道は開けない。
こんなムードの中、9月27日注目の人が登板した。蕭一傑投手(23)。このコーナーに一度登場してもらった。皆さんご存知のドラフト1位指名選手。腰痛でしばらくリタイアしてから、初の先発マウンド。故障で自分を見失う選手がいる。これまで何人か見てきただけに気になる。果たして好調時のピッチングが取り戻せるか。持ち味の発揮は-。今後を占うピッチング内容は、7イニング投げて被安打はたったの2本。当然無失点である。精神的なダメージはない。故障からくるフォームの崩れもない。この先が期待できるピッチャーであることを証明した。
心配は無用だった。腕は良く振れている。球に勢いがある。切れもいい。好調時の球威は戻っている。ストレート、変化球とも低めに集まっていた。球を低めにコントロールする持ち味は十分発揮されている。本来のピッチングだ。「まだ、コントロールの面で納得いかないところはありましたが、調子は良かったと思います。確かにもう少しスピードが出てほしいが、僕の場合、ボールを低めに集めて勝負していくのが自分のピッチングですから」と己をしっかり見つめている蕭だが、何か、これまでよりテンポが良くなったようにも見えた。「いや、別に意識はしていません」と語っていたが、生き生きとしたマウンド上の動作が調子の良い現状を物語っていた。
この日のピッチングなら1軍デビューしても大丈夫だが、現在チームはCS出場をかけて、シ烈な3位争いをしている。未経験の選手を起用するのはやはり二の足を踏む。今シーズンの初登板は厳しいかもしれないが、キャンプから今シーズン指導にあたってきた、中西ピッチングコーチに聞いてみると「ぜひ一度1軍で投げさせてみたいですね。欲を言えばもう少し速い球が投げられたら申し分ないが、今日も球は低めに集まっていたし、調子はいいと思いますよ。彼の場合、低めの球で勝負するのが持ち味ですから。それにねえ、学習能力が高い。我々の言うことを理解するのが早い。本当、1軍デビューができたらいいんですが…」と言う。1軍レベルに達したということだろう。本人以上に蕭のデビューを心待ちしている。
高い学習能力は「もう日本に来て8年目になります。日常会話は大丈夫ですし、字の方もまあまあ読めます」にあるはずだ。当然チームにも溶け込みやすい。腰痛は大事に至らなかった。もう完治している。今季のウエスタン・リーグの成績に目を通してみる。途中で戦列を離れたことで残念ながら規定投球回数に達しなかったが、16試合に登板して7勝1敗。防御率は2・26と申し分ない。そして、勝ち星“7”は同リーグの最多勝(他2人)。「今、テーマにしているのは、インコースの球です。この世界でいい結果を出そうと思ったら、やはり内角のシュートがないとダメですから。1軍ですか…。チャンスがあったらぜひ投げてみたいです」。この試合、内角で勝負して、3個の見逃し三振を奪った。学習能力の賜物だろう。ゲーム後、ミーティングが終了すると外野のフェンス沿いを、1人黙々とランニングする姿があった。努力を惜しまない姿勢に、私も1軍デビューを拝見したい衝動にかられた。
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- 本間勝(ほんま・まさる)
- 1939年(昭14)5月1日生まれ。愛知県出身。中京商(現中京大中京)を卒業後、58年に阪神タイガースに入団。投手として活躍し、60年5月15日の巨人戦で初勝利をマーク。この年に13勝を挙げた。66年に西鉄に移籍。翌年、現役を引退。
現役生活は実働10年で、216試合に登板。28勝38敗。16完投、4完封で377奪三振。通算投球回数は693回1/3で防御率2・86。
退団後は14年間の新聞記者生活を送る。球団の営業担当などを歴任し、阪神の球団広報に。吉田義男氏(日刊スポーツ客員評論家)が3度目の監督に就任した時は広報部長。大物外国人グリーンウェル(レッドソックス→阪神)が「神のお告げ」で途中帰国したときの対応に苦慮。「あの年は、なかなかしんどかったですなあ」と振り返る。星野監督には、シーズン中の記者とのお茶会を進言。「あれだけ気の利く監督でしたから。広報の私は必要ないですな、と言ったこともありましたよ」。激しいスクープ合戦を繰り広げる虎番記者と、監督や選手との調整に手腕を発揮した。長い記者生活のキャリアを生かした名物広報ぶりに、お世話になった虎番は多数。
現阪神タイガースOB会副会長。
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