2009年9月25日
未完の大器
~阪神・森田一成内野手~
185センチ、88キロ-。ややふっくらした体形。バッティングフォーム。走る毎、ちょっとしたしぐさを見て思い出したのは、OBで、かつての4番バッターだった故・遠井吾郎さん。私、故人とは同期。何となく親しみを感じる。
阪神・森田一成内野手(20)。岡山は名門・関西高から、高校生ドラフト3位で入団した右投げ、左打ちの長距離砲。今季2年目を迎えた未完の大器。桧舞台での活躍を夢見て飛び込んだ世界だったが、道程は決して平坦ではなかった。高校時代には甲子園大会に出場しているが、右肩を脱臼して2度の手術を余儀なくされた。プロ入りはその右肩が完治しないまま入団。体力作りからスタートした1年目。シーズン終了後、待っていたのは支配下選手から育成への降格だった。背番号は64から“122”に変更。強固な精神力を持った人でも挫折しかねない状況にもめげず、森田は黙々と練習に取り組み、野球と向き合っている。
入団した年の森田。練習を見ているとボールは投げられない。ノックの打球を追う動きは鈍いし、捕球もままならない。正直言って、スカウトの目を疑ったこともあったが、逆に、故障しているにもかかわらず獲得したということは、磨けば立派に光る素材だということ。「自分の持ち味は長打です」。今年になって頭角をあらわしてきた。本人も自信を持っているのだろう。そのパワーには定評がある。バッティング練習を見ていると打球は軽々と外野フェンスを越えていく。遠くへ飛ばすことに秀でている選手には間違いない。
先日、鳴尾浜球場で行われた首位攻防戦。負けたら中日の優勝が決まる試合。相手に先手を取られるなど厳しいゲーム展開。前を打つ庄田のホームランで1点差に詰め寄った6回。スターティングメンバーで出場していた3打席目。森田の放った一打は「うれしかったですねえ。今も手のひらにあの時の感触が残っています」とニッコリ笑う見事なプロ入り初ホーマー。試合を振り出しに戻した一発の裏には、ブラゼルのひと言があった。前日の試合後の練習、故障してファームへ調整にきていた同選手と一緒にバッティング練習。その場で「左へ流す時も、センター方向へ打つ時も、右翼へ引っ張る時と同じようにボールを強くたたかないとダメ」の助言が実った。なんとその一打は、センターはスコアボードの上を越えていく大ホームラン。森田はこの日3安打。次の回にはバルディリスの2ランを誘発。中日の目の前の胴上げを阻止した。残念ながらヒットは出なかったが、3試合連続、22日、23日のソフトバンク戦にもスタメンで出場している。
徐々に力を付けてきた。アピールしたいのはバッティング。打撃を担当する八木コーチの目にはどう映っているのだろう。「森田ですか-。可能性を持っているのは間違いないです。まだ、守備とか走塁など、いろいろな面を総合するとやることはたくさんあります。これから、もっともっと実践を積んでいくことですね。昨年は故障が完治していなかったこともあって、ほとんど試合に出ていません。それに比べれば今季の出場数は多いかもしれませんが、やはり、100打席、200打席という経験をしていかないと…。まだ少々時間がかかるというのが現状ですね」である。確かに出場数は多くなったとはいえ70打席に達したところ。根気よく、辛抱強く指導していくタイプの選手だ。
“長打”という魅力を持った男。時間はかかるだろう。2、3年の歳月が必要かもしれないが、あの一発で目覚めてほしい。可能性は秘めている。その可能性に期待したい選手。育成選手への降格。1年目からプロの厳しさを体験した森田は「故障しているにもかかわらず、ドラフトで指名していただいたことには感謝していますが、育成選手を言い渡された時は、本当に悔しかった。こうなってもやることは一緒ですが、絶対見返してやろうという気持ちになりました。今年も、公式戦はもう終わりましたが、僕たち、10月にはフェニックス・リーグがありますし、11月には秋季キャンプもあります。首脳陣にアピールするチャンスは、まだ十分ありますから頑張ります。アピールしたいのは、やはりバッティングです」と表情を引き締めた。自分との闘いである。己の野球人生に悔いを残すな。努力なくして進歩はない。
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- 本間勝(ほんま・まさる)
- 1939年(昭14)5月1日生まれ。愛知県出身。中京商(現中京大中京)を卒業後、58年に阪神タイガースに入団。投手として活躍し、60年5月15日の巨人戦で初勝利をマーク。この年に13勝を挙げた。66年に西鉄に移籍。翌年、現役を引退。
現役生活は実働10年で、216試合に登板。28勝38敗。16完投、4完封で377奪三振。通算投球回数は693回1/3で防御率2・86。
退団後は14年間の新聞記者生活を送る。球団の営業担当などを歴任し、阪神の球団広報に。吉田義男氏(日刊スポーツ客員評論家)が3度目の監督に就任した時は広報部長。大物外国人グリーンウェル(レッドソックス→阪神)が「神のお告げ」で途中帰国したときの対応に苦慮。「あの年は、なかなかしんどかったですなあ」と振り返る。星野監督には、シーズン中の記者とのお茶会を進言。「あれだけ気の利く監督でしたから。広報の私は必要ないですな、と言ったこともありましたよ」。激しいスクープ合戦を繰り広げる虎番記者と、監督や選手との調整に手腕を発揮した。長い記者生活のキャリアを生かした名物広報ぶりに、お世話になった虎番は多数。
現阪神タイガースOB会副会長。
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