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2009年9月10日

集中力だ

~ソフトバンク・巽真悟投手~

 コントロールが定まらない。ストレート、変化球とも高めに浮く。ボールが先行する。どうしても、カウントを悪くしての勝負になる。苦しまぎれのピッチングになる。相手打者が甘い球を打ち損じてくれた。ボール球に手を出してくれた。まだ力不足のファームだから何とか助かったものの、これでは1軍で通用しない。今季のドラフト1位、ソフトバンクへ入団した巽真悟投手(22)。即戦力の期待を寄せられた新人だったが、この日のピッチングを見る限り、まだ少々時間はかかりそうだ。厳しい世界だが、自分で選んだ道。何事にもへこたれるな。

 近大のエース。大学ナンバーワンの評価を得てのプロ入り。3年の春には、関西学生リーグの新記録となる“23奪三振”をマーク。大いに注目された存在。前半のウエスタン・リーグでは先発投手として登板。実際にゲームでのピッチングを拝見したことはないが、それでも“6勝”の勝ち星を挙げている。紙面などでは何度も名前は見たが、7月に入った頃から名前も姿も目にしなくなった。一度は直に見てみたかった投手。「故障をしたのでは」と気になったが、先日、本人の話を聞いて納得した。「約1カ月、試合には投げないで、ランニング主体の練習をしていました」と言う。1軍レベルで巽のピッチングを評価した場合、チームの方針として、時間をかけた育成をうち出したのだろう。

 マウンド上の巽を見ていると、確かに体の線が細い。身長は182センチと恵まれているのに、体重は67キロ。野球選手を評価する、ひとつのバロメーターでもあるお尻は小さい。まだ体がプロの域に達していない。チームとしての方針を鳥越2軍監督に聞きに行くと、まず「どう見ましたか」の逆取材を受けた。「ちょっとねえ…」。正直に感じたまま首をかしげると「そうなんですよ。まだまだ時間はかかりますね。現状では高卒のピッチャーだと思って鍛えています。実力的にも、今は故障者がいますのでゲームに出られますが、故障者が復帰してきたら、出番はなくなると思いますよ。これからは体力面、技術面ともしっかり鍛えていきますが、彼の場合、練習より、ゲームの方がいい球を投げますから、そういう意味で期待しています」とかなり厳しい発言はあったが、これも、期待が大きいが故の苦言に違いない。

 今は覚悟を決めて野球と向き合う時だ。大いに苦しめ。苦しみのド真ん中にあっても、その向こうには夢がある。夢をあきらめてはならない。夢は追い続けるものだ。また、野球が好きであり続け、無心で野球に取り組んだ選手は1軍で活躍をしている。自分に厳しくなれ。いちから再出発するという強い気持ちを持って練習することだ。マンネリ化した練習では何の意味もない。何事にも集中しろ。特にピッチング。フォームのバランス、腕の振り、リリースポイント。いずれも集中力なくして成果は得られない。体で覚えることだ。

 9月7日現在の成績は、18試合に登板。6勝6敗で防御率が4・87。確かに防御率がピッチング内容を物語っている。「変化球は、まあまあコントロールできるんですが、ストレート系がどうしてもバラついてしまう。1カ月間、ブルペンで投げ込みをしましたが、球の切れ、制球力とも、もっともっと力を付けていきたい。今の調子はあまり良くありません。やることはいっぱいあります。目標は1軍ですが、人一倍練習をして、このウエスタンで力を付けていかないと認めてもらえませんから」は巽の話である。悔いの無い練習をするためには、自分との闘いに勝つことだ。克己を持って努力していけば、道はおのずと開ける。努力を惜しむな。まだ若い。チャンスは、これから何度も訪れるはずだ。


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ウエスタン一番星
本間勝(ほんま・まさる)
 1939年(昭14)5月1日生まれ。愛知県出身。中京商(現中京大中京)を卒業後、58年に阪神タイガースに入団。投手として活躍し、60年5月15日の巨人戦で初勝利をマーク。この年に13勝を挙げた。66年に西鉄に移籍。翌年、現役を引退。
 現役生活は実働10年で、216試合に登板。28勝38敗。16完投、4完封で377奪三振。通算投球回数は693回1/3で防御率2・86。
 退団後は14年間の新聞記者生活を送る。球団の営業担当などを歴任し、阪神の球団広報に。吉田義男氏(日刊スポーツ客員評論家)が3度目の監督に就任した時は広報部長。大物外国人グリーンウェル(レッドソックス→阪神)が「神のお告げ」で途中帰国したときの対応に苦慮。「あの年は、なかなかしんどかったですなあ」と振り返る。星野監督には、シーズン中の記者とのお茶会を進言。「あれだけ気の利く監督でしたから。広報の私は必要ないですな、と言ったこともありましたよ」。激しいスクープ合戦を繰り広げる虎番記者と、監督や選手との調整に手腕を発揮した。長い記者生活のキャリアを生かした名物広報ぶりに、お世話になった虎番は多数。
 現阪神タイガースOB会副会長。

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