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2009年7月30日

プロの壁

~中日・野本圭外野手~

 「体力面を含めた、全体的なレベルアップですね」。中日・辻2軍監督が、テーマを与えて鍛え直しているのは、今季ドラフト1位で入団した野本圭外野手(25)である。身長180センチ、体重81キロ。左投げ、左打ち。落合監督の強い希望があっての指名。即戦力の期待がかかった新人。開幕1軍入りを果たした。外野の一角に食い込むかと思われたが、何度かチャンスを与えてもらったものの、定位置確保には及ばなかった。6月、ついにファーム落ち。目下、再度の昇格を目指して汗と泥にまみれている。

 甲子園球場で行われた、ウエスタン・リーグの阪神-中日戦。野本を拝見するチャンスガ訪れた。2連戦、いずれも“3番、右翼”で出場。1試合目が2本。2試合目は3本。まるで“安打製造機”のように打ちまくっていたが、ヒットを放って出塁しても、一塁ベース上で脇を締めた左腕の使い方を何度も繰り返す。その動作を見ていると、首をかしげるしぐさが目に付く。納得いかないのだろう。確かにすべてのヒットが会心の当たりではない。速球に差し込まれて、やや詰まったヒットもあったが、われわれから見れば、少々差し込まれていても、バットをしっかり振り切っているから内野手の頭を越えている、と思うのだが「う~ん、確かにバッティングは上向いていますが…」と野本の返事は煮え切らない。何か胸に引っ掛かっているのだろう。

 ファームにおりてきた時のテーマを聞いてみた。野本は「守りですね。守備力です。コーチに言われました」。ストレスはここからきているようだ。なかなか進歩しない自分自身に、いら立ちがあるのだろう。課題の守りについて、今年から外野の守備を担当する上田コーチに質問してみると「バッターが打った瞬間の第1歩ですね。例えば、その打球はバットの芯で捕らえたものなのか、それとも詰まっている打球か。また、バットの上っ面か、先っぽか、根っこか。右か左かもそうですが、そういう打球を瞬時に判断して第1歩を踏み出すわけで、その1歩で守備範囲はかなり違いますから」だった。ハイレベルの問題だが、プロの世界ではごく当たり前のこと。身に付けるためには、一打一打に集中すること。そして経験を積む以外にない。

 辻監督はどう見ているか。苦労人だけに厳しい目を持っている。「守りはまだまだですし、足だってそんなに速いわけではありませんから、走塁の技術を身に付けていかないといけませんしね。確かに下におりてきた時に比べれば、ヒットは出るようになりました。だいぶ良くなってはいますが、もっと全体的にレベルを上げていかないとダメです。でも、いま一生懸命頑張っていますよ」である。今年の選手名鑑等に目を通すと走攻守3拍子そろった選手と明記されているが、首脳陣の話を聞いてみると、まだその域には達していない。人情と愛情。そして時には非情になって指導していくしかない。

 インタビューに応える野本の表情には、いら立ちが見てとれた。思うにならない自分自身がもどかしいのだろう。大きな夢を抱いて飛び込んだ世界。予想もしなかった分厚い壁が立ちはだかっていた。今、その壁を突き破ろうと苦しみのド真ん中にいる。「やることがいっぱいあります。バッティング、守備、走塁だけでなく、体力強化などすべての面をレベルアップしていかないと…。何事にも挑戦して思い切ってやっていくしかありません」。自分と闘う野本がいた。克己を持て。時には原点に戻ることが必要な場合がある。もっと、もっと純粋な気持ちで野球に取り組め。その向上心がある限り、間違いなく壁は突き破れる。注目していきたい選手の1人だ。


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ウエスタン一番星
本間勝(ほんま・まさる)
 1939年(昭14)5月1日生まれ。愛知県出身。中京商(現中京大中京)を卒業後、58年に阪神タイガースに入団。投手として活躍し、60年5月15日の巨人戦で初勝利をマーク。この年に13勝を挙げた。66年に西鉄に移籍。翌年、現役を引退。
 現役生活は実働10年で、216試合に登板。28勝38敗。16完投、4完封で377奪三振。通算投球回数は693回1/3で防御率2・86。
 退団後は14年間の新聞記者生活を送る。球団の営業担当などを歴任し、阪神の球団広報に。吉田義男氏(日刊スポーツ客員評論家)が3度目の監督に就任した時は広報部長。大物外国人グリーンウェル(レッドソックス→阪神)が「神のお告げ」で途中帰国したときの対応に苦慮。「あの年は、なかなかしんどかったですなあ」と振り返る。星野監督には、シーズン中の記者とのお茶会を進言。「あれだけ気の利く監督でしたから。広報の私は必要ないですな、と言ったこともありましたよ」。激しいスクープ合戦を繰り広げる虎番記者と、監督や選手との調整に手腕を発揮した。長い記者生活のキャリアを生かした名物広報ぶりに、お世話になった虎番は多数。
 現阪神タイガースOB会副会長。

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