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2009年5月21日

1軍への道

~阪神・蕭一傑投手~

 蕭一傑(しょう・いっけつ)投手(23)。今季のドラフト1位。阪神タイガースに入団した台湾の選手。身長180センチ、体重86キロ。右投げ、右打ち。高校(日南学園)の時から、日本へ野球留学。甲子園大会は2年の夏と3年春に出場。その非凡な才能は、大学に進学してさらに開花。1年生の春からベンチ入り。奈良産大の5季連続リーグ優勝に貢献した。特に昨年の春季リーグでは7試合に登板して6勝0敗。秋季は8試合、5勝0敗1セーブ。連続して最優秀選手とベストナインに選ばれた。また、この年の6月に行われた全日本大学野球選手権、1回戦は中央学院大戦。延長13回を投げ抜いて完封。2回戦の東北福祉大戦。敗れはしたが、延長11回を2失点。抜群のピッチングを披露した。

 アマチュア時代の実績は申し分ない。当然即戦力の期待はあった。足踏みしているのが現状。1軍昇格の機会はまだない。プロ野球の世界だ。新人の間は、日本人であっても不安がいっぱい。高校、大学、7年間日本で生活しているとはいえ、異国の地だ。弱肉強食の戦場に1人放たれて、フラストレーションが溜まらないはずがない。「キャンプなんかは、やはり疲れました。タイガースに入って、4カ月が過ぎましたが、振り返ってみると“疲れた”という思いが強いです」。精神的な疲労はあって当たり前。それでも一時は防御率トップに立つなど、5月19日現在の成績は、7試合に登板して3勝1敗。防御率は3位の2・48。不安のある中、素晴らしい結果を残している。1軍から声がかからないのは、どこに…。

 新聞紙面などから得た情報は良い。ストレートのMAXは148キロという。スライダーの切れ、コントロールともいい、と聞いていた。ウエスタンリーグのマウンドを拝見した。落ち着いている。フォームはきれいだ。だが、何か物足りない。若さというか、力強さに欠ける。欠点は見当たらないが、特長のないタイプ。甲子園球場の広島戦。スコアボードに出てくる球速、ストレートで140キロ台が続かない。調子の悪い日にあたったのかもしれないが、私の目には“力不足”に映った。本人も「まだまだダメです。すべての面でレベルアップしないと…」という。この前向きの姿勢が救いだ。手を抜くことなく野球に取り組んでいけば、道は必ず開ける。

 今季からファームで指導にあたっている、中西ピッチングコーチに、蕭について聞いてみた。「フォームに欠点はありませんが、あと3~5キロ球速がアップしてくれたら、1軍でも通用すると思います。そうですねえ、球速アップのために、今後やっていくべきことは、いかに体の切れをシャープにするか、です。体そのものをもっと、もっと鍛えることですね」である。選手が持つ、奥に潜む能力を引き出すのがコーチの役目。フォームに欠点のない投手の球速アップは、簡単なように思われがちだが、矯正するところがなく、現状のまま目的を達成させるのは至難の業。同コーチが指摘していること以外にない。

 目標の1軍昇格は近いようで遠い。誰も助けてくれる世界ではない。相手との戦いの前に、まず自分との闘いがある。レベルアップに近道はない。厳しい練習から逃げるな。「高校の時から、甲子園にあまりいい思い出はありませんので、これからいい思い出を作っていきたいです。今、心がけているのは、力のある球といいますか、打者の手元でポップする生きた球を投げられるようにすることです。もっと、もっと練習しないといけませんね」。蕭である。そう、大いに鍛えてほしい。夢を持ち続けることだ。勇気に目隠しするな。夢と勇気は自信と強さを与えてくれる。そして、自信が備わった時、1軍昇格は必ずやってくる。


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ウエスタン一番星
本間勝(ほんま・まさる)
 1939年(昭14)5月1日生まれ。愛知県出身。中京商(現中京大中京)を卒業後、58年に阪神タイガースに入団。投手として活躍し、60年5月15日の巨人戦で初勝利をマーク。この年に13勝を挙げた。66年に西鉄に移籍。翌年、現役を引退。
 現役生活は実働10年で、216試合に登板。28勝38敗。16完投、4完封で377奪三振。通算投球回数は693回1/3で防御率2・86。
 退団後は14年間の新聞記者生活を送る。球団の営業担当などを歴任し、阪神の球団広報に。吉田義男氏(日刊スポーツ客員評論家)が3度目の監督に就任した時は広報部長。大物外国人グリーンウェル(レッドソックス→阪神)が「神のお告げ」で途中帰国したときの対応に苦慮。「あの年は、なかなかしんどかったですなあ」と振り返る。星野監督には、シーズン中の記者とのお茶会を進言。「あれだけ気の利く監督でしたから。広報の私は必要ないですな、と言ったこともありましたよ」。激しいスクープ合戦を繰り広げる虎番記者と、監督や選手との調整に手腕を発揮した。長い記者生活のキャリアを生かした名物広報ぶりに、お世話になった虎番は多数。
 現阪神タイガースOB会副会長。

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