2009年4月30日
背番号10の新人
~広島・岩本貴裕外野手~
試合前の練習。選手を目で追っていると、赤地に変わった広島のユニホームの中で、背番号“10”を見つけた。私の記憶は当てにはならないが、これは、あの金本(現阪神)以来ではなかろうか。分厚い胸板。182センチ、90キロの恵まれた体。ウエスタン・リーグではあるが、打順は4番。今季、亜大からドラフト1位で入団した岩本貴裕外野手(23)左投げ、左打ちがその人。開幕当初は1軍入りしていたが、若手の控え選手は練習不足になる。実戦の経験も不足がちになることから、ファーム行きとなったが、新人でありながら背番号の10。打線の軸となる4番バッター。岩本に寄せる期待の大きさがうかがえる。
本人に、まず背番号について聞いてみた。もう何度も質問を受けているのだろう。「また、きたかあ」とでも言いたげな雰囲気に思えたが、そこは新人。ニコッと笑って「大変な背番号であるのは、よーく分かっています。入団交渉のときに球団から勧められて付けましたが、すごい人ですから。あまり意識しないようにしています」と話してくれたが、まだまだこれからの若い選手。岩本から見たら前任者は雲上の人。金本も100試合以上出場するようになったのは4年目から。現時点で同じ目線で比較するのはかわいそうだ。
チームの方針だろう。少々打てなくなってもクリーンアップから外すことはない。私が、このコーナーを担当するようになってからも、ドラフト上位で獲得した長打力の持ち主には4番を打たせていた。「地位は人を育てる」ともいう。英才教育-。岩本への期待度、そして現状を山崎2軍監督に聞いてみた。「ドラフト1位で獲得した選手だし、遠くへ飛ばすパワーもある。現在は英才教育というより、力を見極めている段階ですね。正直、これからですが、昨年ウエスタンで打点王をとった松山が戦列に復帰したし、両選手の状態を見ながら4番は決めていきます。でも、クリーンアップを外すことはないでしょう」と語っていたが、さらに、こう付け加えた。
「今は、われわれが与えている4番です。自分の力でとったわけではありませんから、本人がその点を勘違いしないように、われわれが見ていかないとね。まだ、スイングに相手を威嚇するような力強さには欠けますが、じっくり育てていきます。場合によっては一度や二度は雷を落とさないといけないかな」。
なかなか手厳しい。調子がいまひとつ上がってこない。23日のオリックス戦から松山に4番を譲ったが、現在放っている2ホーマーは、ナゴヤ球場のバックスクリーンと、広島ファームのホームグラウンドである広い由宇の球場で、右中間へ完ぺきな打球で放り込んだ。持ち前のパワーは実証済み。「ファームに来て、ピッチャーの生きた球を打てるようになりまして、いい経験をしています。今は、コーチの人から上半身と下半身のバランスのとり方とか、下半身の使い方などのアドバイスを受けています。まだ勉強することばかりですが、練習あるのみです」。自分を厳しく見ているのがいい。練習でできないことが、試合でできるはずがない。もっと、もっと練習に励め。
性格は明るいという。これからプロの厳しさと直面するだろうが、地元広島商出身。高校3年のときには、エースで4番。同校を16年ぶりの甲子園に導いた。そして、大学時代は東都リーグで歴代4位の16ホーマーを放ったスラッガー。失敗を恐れるな。大きく育ってほしい。ただし、失敗した場合は、原因を追求し解決しておくこと。道は必ず開ける。
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- 本間勝(ほんま・まさる)
- 1939年(昭14)5月1日生まれ。愛知県出身。中京商(現中京大中京)を卒業後、58年に阪神タイガースに入団。投手として活躍し、60年5月15日の巨人戦で初勝利をマーク。この年に13勝を挙げた。66年に西鉄に移籍。翌年、現役を引退。
現役生活は実働10年で、216試合に登板。28勝38敗。16完投、4完封で377奪三振。通算投球回数は693回1/3で防御率2・86。
退団後は14年間の新聞記者生活を送る。球団の営業担当などを歴任し、阪神の球団広報に。吉田義男氏(日刊スポーツ客員評論家)が3度目の監督に就任した時は広報部長。大物外国人グリーンウェル(レッドソックス→阪神)が「神のお告げ」で途中帰国したときの対応に苦慮。「あの年は、なかなかしんどかったですなあ」と振り返る。星野監督には、シーズン中の記者とのお茶会を進言。「あれだけ気の利く監督でしたから。広報の私は必要ないですな、と言ったこともありましたよ」。激しいスクープ合戦を繰り広げる虎番記者と、監督や選手との調整に手腕を発揮した。長い記者生活のキャリアを生かした名物広報ぶりに、お世話になった虎番は多数。
現阪神タイガースOB会副会長。
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