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2008年6月12日

大物ルーキー

~ソフトバンク・大場翔太投手~

 鳴尾浜球場で、まさか、こんな“大物ルーキー”を、この目で拝見できるとは思わなかった。大場翔太選手(22)東洋大出身。昨年11月のドラフト会議。6球団が競合。アマ球界ナンバーワン投手を仕留めたのは、ソフトバンクホークスだった。当然、大学・社会人の1巡目。ペナントレースでも鮮烈デビューを飾ったが、この世界、そんなに甘くはなかった。調子が落ちる。懸命なピッチングを試みても、各チームの打線につかまってしまう。ファームへ。現在2軍で鍛え直している真っ最中。ウエスタン一番星の取材で阪神-ソフトバンク戦を観戦に行くと、場内アナウンスの声が球場に流れた。「9番、ピッチャー大場」。一度は実際に投げている姿を見たかった投手。取材対象者は決まった。ピッチングに注目。

 ウエスタン・リーグ2試合目の登板。先日、由宇で行われた広島戦。8イニングを被安打4、失点1の好投をしている。身長182センチ、体重80キロ。バランスのとれた、いい体だ。マウンド上では落ち着いている。大学時代、数々の修羅場をくぐってきただけのことはある。ダイナミックな投球フォームだ。今回は6イニングで被安打5の2失点。速球のマックスは何キロ出ていたか分からないが、5球か6球のうち、1球は目を見張る球がある。好投手になる条件は持ち備えている。そして、直球、変化球を投げる時の腕の振りは変わらない。並の投手でないのは分かった。これだけの選手なら自分を見失うことはないだろう。ファームに落ちた時の立場は承知のはず。調子を取り戻すためのテーマを持って2軍落ちしたに違いない。

 コーチからテーマを与えられる場合がある。新人であればなおさらだ。果たして大場は…。藤田ピッチングコーチに聞いてみた。「自分でテーマを決めてファームにきましたね。下半身を鍛えようと思ったのでしょう。よく走っていました。技術的には腕の振りがちょっと小さくなっていた。特に前への振りが小さかった。指摘した点といえばそれぐらいですかね。だいぶ調子は良くなってきましたよ。この前の広島戦より、今回の方がいい球を投げていました。まあ、2点は取られましたが、フォームのバランスが良くなってきましたね」と現状などを話してくれたが、さすが大物ルーキー。人に頼らず、自分でテーマを持ってきたところが素晴らしい。

 己に厳しいところがいい。己の野球人生に悔いを残さないためには、克己を持って野球に取り組むことだ。「きょうは打順が回ってきたので代わったと思いますが、まだ投げることはできました」という大場に、ファーム落ちしてから、どんな練習を中心にやってきたかをたずねてみた。「下半身だけでなく、スタミナも含めて体全体を鍛えるために、ランニングを重点的にやりました。それと技術面では変化球のコントロールですね。カウントが悪い時でも確実にストライクが取れる制球力と、ストレートの切れですね」。そういえば、不利なカウントから変化球でストライクを取るケースを何度か見た。ゲームでもきちっとテーマを実行していた。この世界、どんなに速い球を投げても、ストレートだけでは通用しない。今は苦しみのド真ん中かもしれないが、ウエスタンとはいえ、2試合に登板して“2勝”。いい星の下に生まれた強運の持ち主でもある。


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ウエスタン一番星
本間勝(ほんま・まさる)
 1939年(昭14)5月1日生まれ。愛知県出身。中京商(現中京大中京)を卒業後、58年に阪神タイガースに入団。投手として活躍し、60年5月15日の巨人戦で初勝利をマーク。この年に13勝を挙げた。66年に西鉄に移籍。翌年、現役を引退。
 現役生活は実働10年で、216試合に登板。28勝38敗。16完投、4完封で377奪三振。通算投球回数は693回1/3で防御率2・86。
 退団後は14年間の新聞記者生活を送る。球団の営業担当などを歴任し、阪神の球団広報に。吉田義男氏(日刊スポーツ客員評論家)が3度目の監督に就任した時は広報部長。大物外国人グリーンウェル(レッドソックス→阪神)が「神のお告げ」で途中帰国したときの対応に苦慮。「あの年は、なかなかしんどかったですなあ」と振り返る。星野監督には、シーズン中の記者とのお茶会を進言。「あれだけ気の利く監督でしたから。広報の私は必要ないですな、と言ったこともありましたよ」。激しいスクープ合戦を繰り広げる虎番記者と、監督や選手との調整に手腕を発揮した。長い記者生活のキャリアを生かした名物広報ぶりに、お世話になった虎番は多数。
 現阪神タイガースOB会副会長。

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