2008年3月14日
壁を突き破れ
~タイガース・小嶋達也投手~
“試行錯誤”四字熟語辞典をひもどいてみると、その意味は「困難なことを解決する方法がつかめないときに、いろいろな方法を試み、何度も失敗しながら、少しずつある方策を追究すること」とある。大いに悩んでいる。今、この熟語がぴったり当てはまる選手がいる。阪神タイガース・小嶋達也投手(22)。昨年、大阪ガスから大学、社会人ドラフト1巡目で入団した期待の星。昨シーズンの今頃は新人ながら1軍のローテーションにはいっていた。現に開幕3戦目に先発してプロ入り初勝利を挙げた。順調であれば、もっと、もっと表面に出ていいはずの名前が今年は陰をひそめている。
鳴尾浜球場へ取材に出向くと、よくバッティング投手をしている姿を見る。3月8日、四国アイランド・リーグの香川オリーブガイナーズ戦後、狩野とバリディリスが特打を始めた。そのバッティング練習のマウンドに上がったのも小嶋だった。以前にも何度か見た。12日、ソフトバンクとの教育リーグでは、試合の出番がないチャート係。ネット裏で記録をつけている。何か意図あっての事なのか。星野ピッティングコーチに聞いてみた。「調子があがってこないので、今、いろいろ体験をしています。バッティング投手はその一環であって、何かきっかけをつかめれば、が狙い」である。そういえば昨年5月、ファームに落ちてから1軍のマウンドに上がっていない。
タイガースは今年も左腕の先発投手を待ち望んでいる。チャンスはあるはずなのにつかめない。「昨年の今頃はピッチングフォームのことで、あまり考えることはありませんでしたが、今年は腕を強く振ることなど、力のある球が投げられるよう考えてピッチングをしています」小嶋である。表情から察するに、少々悩んでいる感じだ。この話を聞いてちょっとひっかかる点があった。本来の小嶋。どこに力がはいっているかわからないフォームなのに、球の切れは素晴らしい投手。余分なところに力がはいらないのが長所でありながら、見るからに力をこめたフォームで投げていいのだろうか。
その点を星野コーチは「確かに力の抜きかたを完全に心得たピッチャーで、彼の場合1軍の投手だと思い込んでいた。ファームに落ちてきた時でも、すぐに1軍へ上っていく事だと見ていましたが、それがなかなか調子が良くならない。結局そのまま現在に至っているんですよ。下半身が粘れるようにステップを広げたりもしています」とすべてを掌握した上で指導している。「球数をたくさん投げることは気にしませんし、いまは投げてきっかけをつかむしかありませんから」小嶋が言うように、投げるしかない。まさに試行錯誤。今厚い壁にぶち当った。成長過程にはよくあるケース。この壁を突き破った時、本物の小嶋が誕生する。
- 本間勝(ほんま・まさる)
- 1939年(昭14)5月1日生まれ。愛知県出身。中京商(現中京大中京)を卒業後、58年に阪神タイガースに入団。投手として活躍し、60年5月15日の巨人戦で初勝利をマーク。この年に13勝を挙げた。66年に西鉄に移籍。翌年、現役を引退。
現役生活は実働10年で、216試合に登板。28勝38敗。16完投、4完封で377奪三振。通算投球回数は693回1/3で防御率2・86。
退団後は14年間の新聞記者生活を送る。球団の営業担当などを歴任し、阪神の球団広報に。吉田義男氏(日刊スポーツ客員評論家)が3度目の監督に就任した時は広報部長。大物外国人グリーンウェル(レッドソックス→阪神)が「神のお告げ」で途中帰国したときの対応に苦慮。「あの年は、なかなかしんどかったですなあ」と振り返る。星野監督には、シーズン中の記者とのお茶会を進言。「あれだけ気の利く監督でしたから。広報の私は必要ないですな、と言ったこともありましたよ」。激しいスクープ合戦を繰り広げる虎番記者と、監督や選手との調整に手腕を発揮した。長い記者生活のキャリアを生かした名物広報ぶりに、お世話になった虎番は多数。
現阪神タイガースOB会副会長。
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