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復刻1998夏 <日刊スポーツで振り返る1998年夏甲子園>

第16回 横浜、軌跡の6点差逆転

横浜対明徳義塾 9回裏(横浜)2死満塁、サヨナラ勝ちしガッツポーズで喜ぶ松坂大輔(中央)。手前は明徳義塾の捕手井上登志弘(共同)横浜対明徳義塾 9回裏(横浜)2死満塁、サヨナラ勝ちしガッツポーズで喜ぶ松坂大輔(中央)。手前は明徳義塾の捕手井上登志弘(共同)

<横浜7−6明徳義塾>◇16日目◇8月21日◇準決勝

 松坂を決勝のマウンドへ−。心がつながった横浜(東神奈川)が、劇的な逆転サヨナラで明徳義塾(高知)を下した。前日(20日)、250球を投げたエース松坂大輔(3年)を温存し、0−6の劣勢を8、9回に逆襲。9回裏、後藤武敏(3年)の2点同点打で追いつき、なお2死満塁から柴武志(3年)が中前にサヨナラ打した。前日、PL学園(南大阪)と延長17回、史上に残る激闘を演じた横浜は、またもや歴史に名を刻む大逆転劇。きょう22日、京都成章(京都)との決勝で史上5校目の春夏連覇に挑む。先発マウンドにはむろん松坂が上る。

 柴はただひとつのことを思っていた。「松坂を休ませてやりたい。延長戦だけは絶対いやだ」。前日250球。その前が148球。もうそんなに投げさせるものか。8回、4安打を集めて4点を返し2点を追いかける9回裏。後藤のタイムリーで同点に追いついて、なおも2死満塁の打席。8回から代打出場している柴の打球は、詰まっていた。が、ハーフライナーとなって二塁手・松元の頭上に飛ぶ。

 「抜けてくれ!」。松坂は叫んだ。祈りは通じる。球は松元のグラブをかすめてセンター前に転がった。三塁から松本がサヨナラのホームを踏んだ。

 「一塁を回ったところで小山が(喜びの)ジャンプしてるのが見えて、サヨナラ勝ちが分かった」。柴は初のお立ち台で顔を紅潮させた。なんという粘り、なんという集中力。「松坂さんを決勝のマウンドでもう一度投げさせたい、というみんなの思いがひとつになった」。2番手で力投した2年生の斎藤弘が言った。9回表。たった15球で明徳打線を抑えたエースの気力の投球に、勇気がわいた。「半分あきらめていた」。サヨナラのヒーロー柴は正直に胸の内を明かした。前日、決勝2ランの常盤は「負けると思っていた。信じられない」。しかし、ここまで横浜を引っ張ってきたエースをこのままで終わらせたくない。ひとつにまとまった仲間たちが、奇跡を生んだ。

 左打者の柴は、ずっとスタメンを外されていた。1回戦の柳ケ浦(大分)。先発は左の大崎。結果は一塁へのバントヒット1本に終わった。2回戦の鹿児島実(鹿児島)もノーヒッター左腕の杉内が先発。スタメンを外され代打で見逃し三振。準々決勝のPL学園戦も7回の守りからの出場。この打席に悔しさのすべてをかけていた。「気持ちが打たせてくれたんでしょう」。寝静まった合宿所で、黙々とバットを振り続けた柴の努力を知る渡辺元智監督(53)のひとみが潤んでいた。

 同点打を放ったのは今大会この試合まで15打数1安打と絶不調の後藤。県大会では松坂から4番を奪取。25打数16安打、22打点、3本塁打と大当たり。しかし県大会で痛めた腰を、初戦の柳ケ浦戦でヘッドスライディングした際に悪化させた。「骨盤が2、3センチずれているんです」と苦しみもがく毎日。父成男さん(46)は「泣き言なんか言ったことのない子が電話で苦しい、苦しいと言ってきてつらかった」。この日も痛み止めの注射を打ち「優勝のためには腰が砕けてもいい」と悲壮な決意で臨んでいた。

 後藤は、松坂がマウンドに上った時、今年1月に亡くなった曾祖母(そうそぼ)らいさん(享年96)の遺骨の入ったお守りを渡し、「勝つぞ。頑張ってくれ」と激励した。逆に松坂はその裏、打席に入る後藤に「楽に打てよ」とお守りを返した。「絶対ランナーをかえすからな」と答えた後藤は約束通りの同点打。

 「信じられない。野球人生において考えもしなかったことが2日連続で起こった」。5回が終了し、ベンチ裏で「おまえら、勝つ気があるのか」とゲキを飛ばした渡辺監督もナインの粘りに驚き、感動した。

 悲願の春夏連覇へあと1。最後の甲子園マウンドに立つ松坂も、2日続きで激戦をものにした仲間も、見据えるものはただひとつだけ—。 【浅見晶久】

 ◆連日の「感動勝利」に三塁側の横浜アルプス席はうれし涙に包まれた。7回までの0行進にため息ばかりだったスタンドは8回の追撃で息を吹き返した。9回表に登場したエース松坂の母由美子さん(43)はじっと「7」から「1」へと変わる電光掲示板の数字を見つめて祈るような表情。9回裏に同点打を放った後藤一塁手の父成男さん(45)は「やってくれると思っていた。チームに迷惑かけてきたので多少のお返しができた」と目を潤ませた。サヨナラ打を放った柴右翼手の父章さん(51)は「よくやってくれた。息子にありがとうと言いたい」と大声を張り上げた。涙、笑顔、声援が入り交じり、だれ彼かまわず抱き合って感動を確かめ合っていた。

 ◆横浜鈴木尚(横浜高OB) 「すごい。一時期のベイスターズ打線みたいでしたね。9回表に松坂がマウンドに上った時には、思わず鳥肌が立ちました。野球は最後まで分からないということを後輩に教えてもらいましたよ。毎試合、力を入れて見ているから、メンバー全員の名前を覚えちゃいました。優勝したら、全員を横浜スタジアムに招待したいです。もう1試合、頑張れ!」

(1998年8月22日付日刊スポーツ)

2008年8月09日 11:02


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