第9回 松坂が杉内に投げ勝つ
横浜対鹿児島実業 8回裏横浜1死三塁、松坂大輔が左越えに2点本塁打を放つ。投手・杉内俊哉
<横浜6−0鹿児島実>◇11日目◇8月16日◇2回戦
横浜のエース、松坂大輔投手(3年)がノーヒットノーラン男、鹿児島実の杉内俊哉投手(3年)に投げ勝った。5万3000の大観衆の前で白熱した投手戦を展開。松坂は自己最速151キロをマーク、5安打、無四球、9三振を奪い完封した。バットでも杉内から2ランを放った。
9回表2死一、二塁。ウイニングショットはやはりストレートだった。最後の打者を143キロ、真ん中高めの直球で空振りの三振に仕留めると、松坂は右手を腰のあたりでグッと握りしめた。「投げてて楽しかった。ベストピッチです。5安打されたから100点ではないけど、95点」と笑みをはじけさせた。
ノーヒッター杉内との対決が松坂の闘争本能を目覚めさせた。試合前、「杉内君ですか? 意識しますよ。いい投手と投げ合えるのは楽しい。(ノーヒットノーランではなく)僕は完全試合から狙っていきます」と闘志をむき出しにした。センバツ優勝投手のプライドにかけて負けるわけにはいかなかった。
互いに5回まで譲らなかった。松坂が2安打5三振に抑えれば、杉内も横浜打線を3安打4三振と5万3000の大観衆が手に汗握る投手戦を展開。スコアボードには0が10個並んだ。2回表、小倉への初球(空振り)が、巨人益田スカウトのスピードガンでは、沖縄水産・新垣渚投手(3年)と並ぶ自己最速151キロを計測した。
1回戦(対柳ケ浦)の6四死球がうそのように制球が安定。踏み出す左足が三塁側へインステップし、左肩の開きを気にするあまり制球を乱した前回とは違い、甲子園7試合目にして初の無四球試合。三振も9個奪った。初戦の後、シャドーピッチングを繰り返し、打撃投手を務めながらフォームをチェック。天才はわずか4日間で克服した。捕手の小山は「どのボールもコースに決まった。特にスライダーがよかった」と絶賛した。
肩が出来上がったことも重要なポイントだ。センバツ優勝後、1カ月近く肩を休ませたのが逆に響いた。春季県大会、関東大会と登板したが、本来の肩の筋肉は戻らなかった。夏の県大会では40イニングを目標にしていたが、実際には4試合で24イニング止まり。「肩への疲労は少なかったけど、肩の筋肉をつくるという意味では少なすぎました」。渡辺元智監督(53)も投げ込み不足を認めたが、ここにきてようやく右肩が本調子に戻った。
バットでも見せた。8回裏1死三塁。真ん中高めのカーブを左翼席にたたき込んだ。「(第1打席で空振り三振した)カーブを狙ってました」とニッコリ。これが記念の甲子園初アーチだった。
投げて、打って、高校生NO・1投手であることを証明。地元横浜をはじめ、ロッテ、日本ハムの3球団がすでにドラフト1位指名を固めているが評価は上がるばかりだ。
「ナイスゲーム。100点満点」。史上5度目の春夏連覇に弾みをつける大きな1勝。いつもは辛口の渡辺監督もこの日ばかりは上機嫌だった。【浅見晶久】
◆ヤクルト片岡取締役スカウト部長 「無理せず投げていた初戦より、きょうは気合がすごい。春から比べて、抜群のプレートさばきにますます磨きがかかっている。ピークをこの時期に持ってくるなんて、言うことないね。投手でやれば、間違いなく桑田級になるだろうし、野手でもプロで20年…なんて考えてしまうよ」
◆横浜野口球団本部長 「きょうは1点もやれない、という投球でしょう。何がどう、ということじゃない。すべてにおいて、これが本物というレベルなんだから。ランク? “超超クラス”です。今いるマウンドが高校でなくてもいいのに。いつでもプロでOKです」
(1998年8月17日付日刊スポーツ)
2008年8月05日 11:01
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