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コラム <1998−2008 松坂世代・10年の軌跡>

第4回 ヤクルト牧谷
ヤクルト牧谷、10年目の1軍デビュー/上

ヤクルト入団後、母校で自主トレを行う牧谷ヤクルト入団後、母校で自主トレを行う牧谷

 延長10回裏、サヨナラヒットを打ったヤクルト武内を迎え入れるチームメートの輪の中にひと際輝いて見えるユニホームがあった。背番号64。6月23日、雨の中行われた交流戦最終戦、ヤクルト-オリックス戦は、牧谷宇佐美外野手(28)にとって生涯忘れられない試合となった。

 プロ10年目で、この日が初めての1軍ベンチ。牧谷に用意された舞台は、3-1とリードし、なおも1死満塁のチャンス。彼の苦労を知ってか、知らずか。高田監督は最高の場面で送り出してくれた。静かだったスタンドが、この日一番の盛り上がりを見せる。カウント0-2からの速球を思い切り振った。ファウル。結局、空振り三振に終わったが、8248人の観客の前で、オールドルーキーが確かな一歩を踏み出した。

 1998年ドラフトで2位指名を受け、旭川実からヤクルトに入団した。甲子園には出場できなかったが、188センチの長身から放たれるストレートは最速145キロ。この年、北海道の高校から指名された選手はただ1人。将来を期待され、北の大地から上京した。

 しかし、待ち受けていたプロ野球の世界は、想像を絶するほどレベルの高い場所だった。入団1年目の2月、宮崎・西都で始まった2軍キャンプ。突然、異変が起こった。「あれ? おかしいな」。投げようとすると、砲丸投げのようになってしまう。自分のイメージするフォームでボールが投げられない。実は数日前のブルペンで、1軍でも実績のある広田、田畑、松田といった投手のピッチングを見た。小柄で、すでにベテランの域に達している彼らだったが、速さ、キレ、コントロール、いずれも18歳の牧谷の目には「すごい!」と映った。こんな人たちの中でやっていくのか…。まだ調整段階というのに、低めにビシっと決まるストレート、キレのある変化球…。その残像が頭から消えない。

この体験がもとで、いわゆる「投球イップス」(精神的な原因などによりスポーツの動作に支障をきたし、自分の思い通りのプレーができなくなる運動障害のこと)にかかってしまったのである。プロ入りわずか2週間足らずで、投手生命の危機に立たされてしまったのだ。

 ◆牧谷宇佐美(まきたに・うさみ)1980年(昭55)5月1日、北海道旭川市生まれ。188センチの体格と身体能力を高く評価され、旭川実から98年ドラフト2位でヤクルト入団。2年目までは投手登録だったが、ファーム11試合登板1勝2敗、防御率14・03と結果を残せず、3年目から野手転向。今年6月、プロ10年目で初めて1軍登録され、デビューを果たした。現在体重95キロ。右投げ右打ち。血液型B。今季推定年俸670万円。

2008年8月04日 11:01


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