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2008年6月20日

多田野“超遅球”繰り出す条件は

 ついに“あの1球”を見ることができた。今季、楽しみにしていたワンシーンが6月18日の広島戦で現実のものとなった。マウンドにいたのは逆輸入のルーキー多田野。球場をどよめかせるには、十分のインパクトだった。
 

 1点差でリードを許していた5回、シーボルの4球目だった。多田野の投球フォームが、急にゆっくりになったと思った瞬間、ボールが斜め上にめがけて投じられた。「久しぶりだったんで思ったより上に行ってしまった」。山なりのまま、ストライクゾーンへ吸い込まれ、追い込まれたシーボルは振るしかなかった。

 結果は遊ゴロ。野球経験者なら少しは共感できると思うが、あの超スローボールを打っての凡打はかなりの屈辱感だったと容易に想像できる。米国時代から多田野が使い始めた1球で、メジャーを代表する強打者A・ロドリゲス(ヤンキース)を打ち取ったこともある秘密兵器だ。

 テレビ画面からいったん消えて、打者の近くで再び画面に戻ってくる珍ボールは、通常のスピードガンでは計測不能。推定70キロ未満とされ、あるテレビ局は単純計算で48キロと試算したほど、スピードボール全盛の現代野球では異色の勝負球といえる。場内は驚きと笑いが入り交じったどよめきが起き、見逃したファンが「何々?」とざわめいていたのも印象的だった。

 めったに投げないから価値があり、効果も増す。これは本人も自覚している。だからこそ、条件がそろわないと投じない1球だ。油断していると見逃してしまう危険性も十分ある。今後の多田野登板日のテレビ観戦、球場観戦のためにも、取材を通じて得た超遅球が繰り出される条件を記しておきたい。

 1チームが負けている展開
 2体の大きな打者(特に外国人選手)
 3追い込んだカウント

 この3つは必ずしも絶対条件ではないが、魔球が登場する確率が上がるキーワードだ。多田野が「球場の雰囲気を変えることができるので、負けているときが多い」と話したように、投げるシチュエーションは決まっているようだ。米国では「2試合に1回」というペースだったというが、貴重で痛快な1球は、素直にまた見たい。

(村上秀明)


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