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2009年8月11日

陽仲寿ほろ苦いデビュー戦

 怒りに満ちた表情で試合後、バスへ乗り込んでいった。陽仲寿は、ほろ苦いデビュー戦をかみしめていた。

 8月9日楽天戦(Kスタ宮城)。6月に外野手に転向してから初めて1軍で先発出場した。1-1の緊迫した展開の7回、先頭の山崎武の鋭い打球が、やや中堅寄りを襲った。落下点には入ったが、打球はグラブをすり抜けた。屋外球場での初めてのナイターでの外野守備で、ミスをした。

 痛恨だった。先発武田勝の踏ん張りで無失点、次の回に打線が勝ち越して白星へとつながった。「ライトが目に入った」という失敗は紙一重で致命傷にはならなかったが、陽の心は少なからず傷んだだろう。ドラフト指名時は「10年に1人の逸材」などと言われた、将来の遊撃手、スター候補として入団。心機一転の再スタート。同戦で今季初安打を放ったが「失策」の方が思い出に残っただろう。

 また新たな発奮材料を得た。台湾出身。プロ野球選手、未来はメジャーの夢も描きながら、福岡一へ野球留学した。マスクは甘く、笑顔が絶えないが、その裏はハングリー精神の塊。昨季は指導方針を受け入れることができなかった、コーチと衝突したこともあった。好きなお酒などで憂さを晴らすこともあったが、今季から少し変わった。「もうやらなきゃ。ヤバイでしょ」。キャンプから目の色が変わっていた。

 今春、キャンプ中の練習後のある日、食事をする約束をした。約束の時間になっても現れず「ちょっと待ってください」と電話越しに伝えられた。待つこと約45分。時間にルーズとされる台湾人気質かと思いきや、まったく違った。入店するなり謝られ「うまく書けなかった」と事情を説明してくれた。毎日、コーチ、選手らからの助言をノートに書き留める作業に手間取ったという。

 日常生活に支障がない程度とはいえ、実はまだ日本語のすべて、細かいニュアンスも含めて完全には理解できないという。それを思い出しながら一言、一句を、自分なりに「翻訳」して記録しているのだそうだ。ほかの選手も同じようにしているのを知っているが、もちろん、それよりも時間がかかるという。「日本語で言われたことなんで、忘れてしまうんですよ」。日本人選手にはない、プレー以外の悩みを笑いながら明かしてくれた。

 異国の地での挑戦は今年で、高校時代を含めて8年目になった。台湾にはなかった「レバー刺し」が大好物になり、札幌も含めて街を、どこでも1人で歩けるようになった。あと自力で歩いていかなければいけないのは、野球道だけ。スローイング難からコンバートを余儀なくされ「いろいろ考えた」と複雑な思いは「1軍で早くやることが一番」と切り替え、封印した。森本の故障などで巡ってきたチャンス。方向転換して描き直したサクセスストーリーが、始まった。もがいた先にある笑顔が、早く見たい。

(高山通史)


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ハム番日記
高山通史(たかやま・みちふみ)
 新潟県新潟市(旧小須戸町)出身。日刊スポーツ長野、新潟支局を経て02年北海道本社に入社。編集部。一般スポーツ、コンサドーレ札幌などを担当し、03年9月から日本ハム担当。高校3年夏の甲子園に出場して本塁打をマーク。趣味は映画(レンタルDVD)観賞と愛犬の散歩。1975年4月生まれ。
村上秀明(むらかみ・ひであき)
 北海道札幌市出身。96年北海道本社に入社。販売部を経て97年秋から編集部。アマチュア野球、一般スポーツ、中央競馬などを経て日本ハム担当。1973年10月生まれ。
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 北海道札幌市出身。在京スポーツ紙で4年間経験を積み、07年6月に入社。昨年まではプロ野球を担当し、新規参入1年目の楽天、44年ぶり日本一の日本ハムを担当した。休日は最近はじめたゴルフの練習に精を出すが、思うように上達しないのが目下の悩み。1978年4月生まれ。
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 北海道札幌市出身。07年4月北海道本社入社。高校野球、一般スポーツなどを担当。好物は甘いもので、酒と漬物がとても苦手。趣味はカフェ巡りと音楽鑑賞。シンガー・ソングライター馬場俊英の「スタートライン」「ボーイズ・オン・ザ・ラン」がお気に入り。1981年8月生まれ。
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