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2007年9月21日

楽天ファンの行動に癒やされた

 ヒルマン監督の後任に、優勝した時に備えての取材…。そんな張り詰めがちだった心を、和らげてもらった。9月19日楽天戦。試合後、田中幸雄選手の引退セレモニーが行われた。もちろん大ベテランの感極まったあいさつにも、年を追うごとに感情を失っていくハートが、少しは動かされた。グラウンド上で、そのシーンをボーっと眺めていると、ある場所にくぎ付けになった。

 左翼席の楽天の応援団。右翼席の別れを惜しむ日本ハムファンからの田中幸の応援歌に乗って、数人が「~ユキオ!」というフレーズに乗って、ジャンプをしているではないか。田中幸の応援のお決まりのアクション。しかも多くのファンが帰ろうとせず、ライバル球団の選手のセレモニーを見守っていたのだ。0-6の大敗。しかもマー君こと田中が、ダルビッシュに投げ負けた。悔しいであろう、その完敗した試合後なのに、だ。

 田中幸も、その気持ちをしっかり受け止め、理解していた。試合後に行われた記者会見で「楽天のファンの方にはすごく感謝している。2000本の時も、そうだったから」。5月17日に同じ東京ドームで大記録を達成した時も、楽天ファンが敵味方なく、大きな拍手を送っていた。まさに球場が一体となっての祝福ムード演出に一役買っていた。日本ハムファンが主役なら「脇役」だが、欠かせないスパイスになっていたのだ。

 気持ちが、ほんわかとした。いいシーンだな-と思ってしまった。実は、記者は担当している自軍の選手の場合しか、こういったセレモニーを目にするというか、取材をすることがない。他球団、対戦相手の選手が同様の記録、試合後のセレモニーを行ったとしても、自軍の取材へ回り、立ち会えることが少ないからだ。だから日本ハムファンが同じケースの時にどのような反応をしているかは分からない。だが自分にとっては2度とも、偶然かは分からないが、楽天ファンの同じ反応を見たのだ。

 フルキャスト宮城での試合を、シーズン中に何試合か取材に行く。個人的に球場全体の雰囲気が好きだし、売店等で売っている食べ物も「笹かまぼこ」など地域色が出ていたりし、試合前の食事をしているだけでも結構、楽しい。日本の中で一番「ボールパーク」に近い気がする。札幌ドームは機能美にあふれ、最新の設備を誇る球場だとは思う。熱狂的な雰囲気は心に響くが、あの天井の色を含めた、暗い感じが、実は好きではない。スタンドが埋まっていない試合前の練習取材は、かなりテンションが落ちる。特に夏。あの北海道のさわやかな夏の青空から球場入りすると、気持ちが乗らない。

 球場が、多少なりともファンを育てるのか-。どうなのかは分からない。ただ今回を含めて知る限り、楽天のファンの行動に、かなりいやされた。ちょうどその前のカード。ソフトバンク戦後に福岡市内の選手宿舎へ、試合後に取材へ向かうと、ロビーは多くの日本ハムファンでごった返していた。食事などで外出しようとする選手をエレベーター前で待ち受け、追いかけ、サインや握手をねだっていた。きっと一部ファンなんだろうが、どうなんだろう-。東京ドームではその時のシーンを思い出し、少し考えてしまった。

 人間は「環境動物」と言われる。環境によって左右される生き物だという。田中幸のあふれそうだった涙の一部を、少しは手助けしてくれたのが、その時の楽天ファンの反応だっただろう。その試合、マウンドにいたのは田中。高校時代にほんの少しだけ、数試合、取材したことがある。今は当時よりも輝き、誰もまねできない、言葉に表せないような、すてきな笑顔を見せているのが印象的だ。マー君を見て、思う。人間はやはり「環境動物」なのかと。田中幸雄の花道を完ぺきに飾った、えんじ色の集団を見て、その思いは確信に近くなった。

(高山通史)


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 新潟県新潟市(旧小須戸町)出身。日刊スポーツ長野、新潟支局を経て02年北海道本社に入社。編集部。一般スポーツ、コンサドーレ札幌などを担当し、03年9月から日本ハム担当。高校3年夏の甲子園に出場して本塁打をマーク。趣味は映画(レンタルDVD)観賞と愛犬の散歩。1975年4月生まれ。
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