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2006年4月18日

今回のソフトバンク2連戦で思うこと

 試合を見る、取材をする。この2つの行為をするとき冷静でいようと思っている。性格が単純でのめり込みやすい体質。客観性が必要な仕事だけに心掛けてきたつもりだ。ただし、今回の福岡の2試合は自分でつくった唯一の“お約束”を忘れてしまっていた。

 15日のソフトバンク戦、ルーキーの八木が快投した。10回をノーヒット・ノーランに抑える好投だった。延長12回に決勝点が入り、白星と大記録達成はならなかった。球史に名前が刻まれる絶好のチャンスだった。本当に惜しい。最後まで投げたかったんじゃないのかなって率直に思った。

 試合後、八木は「(記録達成できずに)残念だけど、チームが勝って良かった」とコメントした。本音かな? って正直、思った。振り返ってみた。試合中に八木から笑みがこぼれたのは最終回に点を取ってからだった。その後からは、表情が崩れっぱなし。取材をして共通しているのはプロ選手は異様なほど負けず嫌いだ。そうでなくてはこの世界の入り口さえ、見ることができないだろう。

 個人的な感想。あの日、八木は5連敗中のチームの勝利だけが目標だった、記録は二の次だった-良く見過ぎかもしれないがそう感じた。選手たちは勘が鋭い。だからこそ新人の必死な姿に先輩たちが呼応し、むき出しの感情をぶつけていった。グラウンドを越えて熱さが伝わってきた。
 熱は伝染する。翌日の試合の金村だ。ソフトバンクのズレータに暴行を受けながらも、自分でつくった2死満塁のピンチを切り抜けマウンドを降りた。

 実物のズレータは本当に巨大だ。昨年、初めて見たとき、横にダルビッシュがいた。身長はほとんど変わらないダルビッシュが「すごいっすねぇ」と声を上げたのを覚えている。「生」ズレータの威圧感は半端じゃない。

 その大男が死球に怒り、金村に突進してきた。取材陣もスタンドもあっけにとられた。0-0で2死一、二塁のケース。故意の死球ではないと感じるのは日本の野球界の常識だ。ただし、米国では前の打席で本塁打を打った打者に死球を狙いにいくというケースがある。この日は稲葉が該当していた。それに対する金村の報復とズレータは勝手に解釈したのかもしれない。

 そんなことはどうでもいい。あの細身の金村がマウンドから逃げずに応戦した。これまでの経験からか危険を察知したソフトバンク松中が止めに入ったため、大きな事故にはならなかった。松中がいなければどうなったか…。考えるだけでちょっと怖い。

 恐怖と闘いながらも、向かっていった。自分の職場であり、神聖なマウンドを明け渡さなかった。勝手な想像だが、多くの先輩投手が控え、2ケタ勝利をする投手がゴロゴロいるチームに金村がいたならば、そこまで立ち向かっただろうか。向かってくるわずか数秒間、金村の動作に迷いの後の覚悟がうかがえた。「自分の責任とは」と考えたはずだ。「逃げてでも体を守り、勝ち星を重ねるのがエース」「かなわないと分かっていても、決して背中を見せないのがエース」と瞬時に秤(はかり)にかけ、後者を選んだように思える。

 この2戦、ファイティングスピリッツがあふれていた。それが試合に興奮を呼んだ。別に暴行を礼賛しているのではない。なぜ、チーム名がファイターズなのか。闘志、そして必死さは見ているものの胸を打つ。チーム名の意味をあらためて確認した気がした。

(上野耕太郎)


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