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2009年2月13日

初ブルペンで見た。44歳現役の一端

 少しさかのぼるが、今年の元旦は朝寝坊で幕を開けた。すっかり日も高くなったころ、眠い目をこすって起きていくと実家の母親が朝食の準備をして待っていた。年を重ねるごとに正月の過ごし方が自堕落になっている。昔は早起きして、父親とともに神棚にお雑煮を供え、手を合わせたものだった。

 さて、野球選手の正月と言えばキャンプ・インだ。その中でも投手の正月と言えば「初投げ」だろう。この日を境に彼らは1年間、腕を振り続ける。そんな、それぞれの元旦とも言える初投げの日をチームの中で最も律義に過ごしている投手がいる。今年44歳を迎える山本昌だ。

 山本昌が初めてブルペンに入ったのはキャンプ5日目の2月5日だった。それまでも昨年200勝をあげたベテラン左腕がいつ「初投げ」を行うのか。報道陣はやきもきしながら待っていた。この日も読谷球場の練習メニューに山本昌のブルペン入りはなかった。だが、本人いわく初投げが行われることは一目瞭然(りょうぜん)だったという。

 そういえば、この日は足下がやけに光っていた。ブルペンでの投球練習後、山本昌に「きょうはスパイクが新しかったですね」と水を向けると怒られた。「スパイクだけじゃないよ。グラブもそう! だめだなあ~。そういうところをわかってもらわないと。オレは律義なんだから」。そう言って新しいグラブを見せると満足そうに笑った。

 自身にとって“元旦”とも言える初ブルペンの日のために、山本昌は毎年新しいグラブ、スパイクを用意する。そして、それらを身につけた“正装”でブルペン入りする。球数はきっちりと満年齢と同じ44球。この儀式とさえ言える初ブルペンを山本昌は20年以上も続けてきた。記者はこの時、自身が朝寝坊した元旦を思い出し、恥じた。折り目や節目が軽んじられる昨今、山本昌がなぜ、44歳まで現役を続けられているのか、その一端を垣間見た。

(鈴木忠平)


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 94年入社。ロサンゼルス支局で大リーグ担当、大阪でプロ、アマ野球担当などを経て06年11月から名古屋勤務。09年2月から中日担当キャップ。70年12月、北海道生まれ。
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