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2008年1月15日

常勝オレ流監督に休息なし

 バスは伊勢道を東へ向かっていた。2008年1月4日の夜、落合監督は年末年始を過ごした和歌山県太地町から家族とともに名古屋へ戻った。「早いなあ~」。そう言うとちょっと厳しい表情になった。休息は終わり、また戦いが始まる。この日を境に指揮官は徐々に戦闘モードになっていくのだ。ただ…、1つ気がかりなことがあった。

 2007年、落合中日は開幕からアジアシリーズまで158試合を戦った。ペナントレースでは史上まれにみる巨人、阪神との3強によるデッドヒートを戦い。クライマックスシリーズではリーグ2位ながら5連勝で日本シリーズ出場権を獲得し、その勢いのまま53年ぶり日本一となった。頂に登った。だが、盛者必衰が世の常。頂点に立った後、モチベーションを維持するのは半端はことではない。実際、2年連続日本一になった球団は91年西武以来、16年間も出ていない。
 「オレはやりきったなんて思ってないもん。ハハ…」。落合監督は記者のそんな思いを聞くと静かに笑った。「選手の時からずっとこの繰り返しなんだよ。戦って、ちょっと休んで、また戦う。おまえもこの仕事やってればそのうち慣れるよ」。思えば落合博満は現役時代、打撃3部門のタイトルを15個も獲得した。常に勝ち続けてきた。頂点に立ち続けてきた。確かに頂に立った者しかさらなる高みは見えないのかもしれない。モチベーションの低下など杞憂かもしれない。オレ流の自信に触れるといつの間にかそんな気がした。
 バスの中では映画が流れていた。「エア・フォース・ワン」-。ハリソン・フォード扮するアメリカ合衆国大統領が専用機を乗っ取ったハイジャック犯と1人で戦い、勝つ。落合監督はそれをじっと見ていた。何を思っていたかは知らない。ただ大国のリーダーが戦う様をじっと見ていた。そう大統領にも、監督にも休息はないのだ。勝てば、勝つほどまた戦場が待っている。53年ぶりの栄冠などもう頭にはない。常勝指揮官は今年も勝ちに行く。

(鈴木忠平)


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伊藤馨一(いとう・けいいち)
 岐阜県出身の34歳。97年オフから中日を担当。99、04、06年と3度の優勝を知っているのがささやかな自慢。自分の目で見て自分の耳で聞いたものをまず信用する。まず「観察」してからものを言うというのがモットー。
鈴木忠平(すずき・ただひら)
 00年に入社後、01年に中日を担当。その後アマチュア競技、ボクシングなどの担当を経て04年オフの落合政権誕生時から再び担当に。幼少時は大の西武ファンだった。埼玉県生まれ、29歳。
益田一弘(ますだ・かずひろ)
 広島県生まれの31歳。00年に入社して格闘技、相撲、サッカーを取材。「突撃取材」でボクシングの世界王者とスパーリングして3度ダウンした経験も。06年11月から中日担当。

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