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2007年11月14日

「非情」は落合監督へのほめ言葉

 記者席で思わずつぶやいた。「やっぱりな…」。11月1日、日本シリーズ第5戦、9回表が始まる前に落合監督がベンチを出た時だった。完全ペースの先発山井から岩瀬への交代を告げた。後出しジャンケンのようで嫌だが、この“オレ流さい配”を予測していた。自分だけではない。担当記者の大部分が同じような反応だった。

 ペナントレースでも何度も見た光景だった。川上が中田が、朝倉が8回まで好投をする。「完投だ!」。「完封だ!」。そう期待してもセーブがつく状況ではほとんど岩瀬にスイッチしていた。だからこそ担当記者、地元ファンの間からはそれほど驚きの声が上がらなかったのかもしれない。批判の大部分はそれ以外のところから届いたものだという。

 交代理由については諸説が飛び交ったが、落合監督は表向きにはマメと右肩への不安が理由だったと発言している。チーム全体の岩瀬への思いもあっただろう。どれが真相かは落合監督のみぞ知る。だが、試合終了から約3時間が経過した午前0時過ぎ、落合監督に日本シリーズを制した理由としてこんな言葉を聞いた。

 「これまではオレに甘さがあったということなんだ。甘さを捨てたんだよ。監督というのはチームのみんなを(日本一という)ゴールまで連れて行かないといけない。だれかを使いたいからと、こだわってつまずくわけにいかない。ある意味で切り捨てる非情さが必要なんだ」。

 山井の名前を出したわけではない。指揮官としてのポリシーを語ったに過ぎない。ただ個人的にはこれが山井交代の最大の理由ではないかと思う。1-0という点差、山井の実績、すべてを総合的に判断して確率の高い方を選択した。翌朝新聞に大見出しが躍った。「非情」。言われてうれしい人は滅多にいないだろう。だが、過去の自分の甘さを呪っていた落合監督にとっては誉め言葉になるのかもしれない。

(鈴木忠平)


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伊藤馨一(いとう・けいいち)
 岐阜県出身の34歳。97年オフから中日を担当。99、04、06年と3度の優勝を知っているのがささやかな自慢。自分の目で見て自分の耳で聞いたものをまず信用する。まず「観察」してからものを言うというのがモットー。
鈴木忠平(すずき・ただひら)
 00年に入社後、01年に中日を担当。その後アマチュア競技、ボクシングなどの担当を経て04年オフの落合政権誕生時から再び担当に。幼少時は大の西武ファンだった。埼玉県生まれ、29歳。
益田一弘(ますだ・かずひろ)
 広島県生まれの31歳。00年に入社して格闘技、相撲、サッカーを取材。「突撃取材」でボクシングの世界王者とスパーリングして3度ダウンした経験も。06年11月から中日担当。

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