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2006年12月20日

もがくのは格好悪くない

 「もがくことって格好悪いことじゃないんですね」-。中日を戦力外となって楽天に入団した川岸強投手(27)の言葉だ。ほんの1カ月前とは比べものにならないたくましくさ。「クビ」というドン底の経験が1人の男を成長させた。

 10月28日、川岸の心は折れかかっていた。名古屋市内の中日球団事務所に呼ばれ、戦力外通告を受けた。「(現役か、引退か)ちょっと考えます…」。言葉に力はなかった。じつは辞めようと思っていた。「ケガばかりで苦しいことが多かったんで…。それにみじめになりたくないという気持ちもありました」。苦しみから解放されたかった。トライアウトを受けてまで野球を続けるのが格好悪いと思っていた。

 だが、すぐに間違いだと気づいた。交際していた高山香織さん(26=メ~テレアナウンサー)は“無職”となった男のプロポーズを受け入れ、現役続行をうながしてくれた。熱海にいる父は「男は何があってもしがみつけ! 家族を守れ!」と叱ってくれた。チームメートもだれ1人「お疲れさん」と言ってくれる人はいなかった。1週間後に迫ったトライアウトを受ける決心をした。

 それからほぼ毎日、社会人・トヨタ自動車時代にランニングした山道を走った。原点に帰るためだった。そして11月6日、フルキャス宮城で行われたトライアウトでは雄叫びをあげながら投げた。「ウオオオッー!」。スマートな殻を破りがむしゃらになった男に楽天・野村監督が救いの手を差し伸べた。

 「格好悪いか、格好いいかなんて周りの人が決めること。どんなことをしてでもこの世界に生き残ってやります」。174センチ、70キロ。小さな体を、熱い心で支えてきた。それが激動の1カ月間でさらに太く、強くなった。新天地での活躍を祈りたい。

(鈴木忠平)


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伊藤馨一(いとう・けいいち)
 岐阜県出身の34歳。97年オフから中日を担当。99、04、06年と3度の優勝を知っているのがささやかな自慢。自分の目で見て自分の耳で聞いたものをまず信用する。まず「観察」してからものを言うというのがモットー。
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 00年に入社後、01年に中日を担当。その後アマチュア競技、ボクシングなどの担当を経て04年オフの落合政権誕生時から再び担当に。幼少時は大の西武ファンだった。埼玉県生まれ、29歳。
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