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2006年11月10日

日本シリーズ、オレ流強攻策の裏に

 記者席にも、落合監督の苦悩が伝わってきた。日本シリーズ第3戦、中日はついに1度もバントをしなかった。やれる機会は少なくとも3度はあった。それでもベンチは頑なに強攻。第4戦に敗れて王手をかけられるまでそれは続いた。

 1勝4敗。「シーズン中と同じ野球を貫いたヒルマン監督。貫けなかった落合監督」。シリーズ敗退の後は評論家から厳しい指摘を受けた。なぜバントをしなかったのか? 指揮官はこう話す。

 「あれはな…。ことごとく(バントを)失敗する確率の高い選手のところに打順がまわったんだよ。それにシーズン中に(バントを)失敗して、何回も(打線の雰囲気が)重くなったことがあった。ああなると、なかなか打線の勢いは戻らないんだ」。

 監督としてオレが間違っていたなどとは絶対に口にしないが、バツが悪そうだった。自分のサイン1つで打線が乗るか、落ちるか。強攻策の裏にはシーズンを通して苦悩してきた者にしかわからない感覚があったという。

 一生悔いが残る-。落合監督がそう振り返るのが8月20日の巨人戦(東京ドーム)だ。5回無死満塁の場面で打席に向かう投手佐藤充に「振らずに三振してこい」と指示。併殺を防ぐための作戦だったが、1死となって重圧のかかった次打者・荒木は遊ゴロ併殺で無得点に終わった。ベンチの“消極策”が打線を金縛りにした一例だった。

 送りバントやスクイズを失敗するたびに、中日打線は停滞した。落合監督はシーズン中、このナイーブな波を操ることに苦心してきた。そして日本シリーズ第2戦。山本昌の投前バントが相手の好守に封じられ、井上のバントは捕邪飛になった。落合監督は2つの失敗を「停滞」の兆候と見た。「シーズン中なら打線が重くなってもまだ取り返しはつく。だけど短期決戦は1度、重くなったらもう取り返せないんだ」。そしてDH制となった第3戦・札幌ドームからバントを控えたのだ。

 皮肉にも積極的な強攻策を取った中日打線が停滞し、手堅い送りバントの日本ハム打線が波に乗った。来季開催されるPSG(ポストシーズンゲーム)も短期決戦。落合監督の胸には今季の反省と、打開策が渦巻いているはずだ。

(鈴木忠平)


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伊藤馨一(いとう・けいいち)
 岐阜県出身の34歳。97年オフから中日を担当。99、04、06年と3度の優勝を知っているのがささやかな自慢。自分の目で見て自分の耳で聞いたものをまず信用する。まず「観察」してからものを言うというのがモットー。
鈴木忠平(すずき・ただひら)
 00年に入社後、01年に中日を担当。その後アマチュア競技、ボクシングなどの担当を経て04年オフの落合政権誕生時から再び担当に。幼少時は大の西武ファンだった。埼玉県生まれ、29歳。
益田一弘(ますだ・かずひろ)
 広島県生まれの31歳。00年に入社して格闘技、相撲、サッカーを取材。「突撃取材」でボクシングの世界王者とスパーリングして3度ダウンした経験も。06年11月から中日担当。

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