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2006年8月08日

鉄人・谷繁の大記録の「礎」とは

 緑の芝生を蹴る。その一足、一足が、大記録への礎だった-。7月26日、谷繁が捕手として史上4人目となる通算2000試合出場を達成した。「プロに入ってから1度も大きなケガしなかった。だからここまで来れたんだと思う」。その言葉の裏には、プロスポーツの世界で生き残る極意が隠されていた。

 試合前、谷繁の姿を探すのは簡単だ。ウォーミングアップが終わると必ず1人で走る。ナゴヤドームなら中堅フェンス付近を。ビジターならば左翼線付近を。他選手が打撃、守備練習に散っていくのをよそに、30メートル前後の短いダッシュを黙々と繰り返す。時間にして約10分。だが、この姿こそ現役最多出場捕手谷繁を象徴しているのだ。

 三木トレーニングコーチは谷繁の肉体をこう説明する。「筋肉がやわらかい。だから疲れても、ハードな練習をしても張りにくい。うちに来てから肉離れは1回しかしてないんじゃない?」。年齢とともに故障が増えるのはスポーツ選手の宿命。特に肉離れは典型的だ。谷繁はその宿命に逆らっている。やはり天性なのか? 同コーチは首を振った。「オレはそれだけ長くできるのは意志の力だと思う。あいつ試合前に走ってるでしょう。これと決めたことは調子がよかろうと、悪かろうと必ずやる。そういう意志力がある」。

 2000試合を達成した翌日、谷繁は試合前ダッシュの理由をこう説明してくれた。「オレもいろんな選手を見てきた。辞めていく選手は走れなくなっていくんだ。だから、オレは走る。捕手は特に足の前の筋肉ばかり使うんだ。だからバランスを取るために後ろの筋肉を使う短いダッシュをやろうと思った」。そしてこうもつけ加えた。「若いやつがベテランになった時『そういえば谷繁さんがあんなことやっていたな』と思ってくれたら…」-。その日の阪神戦。第1打席の遊撃へのゴロに激走した。内野安打。走れる35歳は、その足で同点のホームを踏み、チームは逆転勝ちした。

 天性だけでできるほどプロは甘くない。走るという苦しく、単純なことをいかに続けられるか-。これからも続くだろう谷繁の出場記録にはシンプルだが、最も難しいプロの秘訣が隠されている。そして、これから何人の選手がそれに気づくのだろう。

(鈴木忠平)


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 岐阜県出身の34歳。97年オフから中日を担当。99、04、06年と3度の優勝を知っているのがささやかな自慢。自分の目で見て自分の耳で聞いたものをまず信用する。まず「観察」してからものを言うというのがモットー。
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