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◆ふくださん 福田豊(ふくだ・ゆたか)。85年日刊スポーツ新聞社入社。野球記者を11年。巨人、西武、日本ハム、アマ野球、連盟などを担当。野球デスクを7年勤めた後、2年間の北海道日刊スポーツ出向などを経て、現在は毎朝6時半出社で「ニッカンスポーツ・コム」の編集を担当。取材で世話になった伝説のスカウト、木庭教(きにわ・さとし)さん(故人)を野球の師と仰ぐ。好きなスタジアムは甲子園と、雄大な富士山を正面に拝める山梨・北麓球場。@fukudasunのアカウントでツイート中。

「甲子園の雰囲気が好き」

13年08月22日 [20時52分]

 正味3日間の甲子園取材があっという間に終わった。

 前橋育英の優勝は見事だった。やはり投手と守りがしっかりしているチームは強い。決勝戦こそ三塁手の一塁への悪送球などで3点を失ったが、6試合を戦って1イニングの最高失点はこの時の3。6試合の総失点はわずか7である。エラーは5個。『1試合で3つ取ろう』(荒井監督〉が目標の併殺は9個取った。

 もちろんエース高橋光成投手も素晴らしかった。自責点ゼロのまま優勝投手にはなれなかった。それでも見事な投球だった。彼のことは宇都宮で行われた春季関東大会で初めて見た。決勝の浦和学院戦。序盤こそ力強いストレートでセンバツ王者を抑えたが、中盤につかまって敗れた。その時の印象は素材は素晴らしいがまだ発展途上というものだった。それがわずか2カ月足らずでここまで成長した。あっぱれである。勝てるピッチングを覚えた。押す時は押し、引く時は引く。ゲームマネジメントを覚えた。そしてエースの自覚。優勝インタビューで「最終回はみんなの思いを背負って投げた」と話したが、このコメントを聞いて泣けた。エースとはチームメートのこの先の人生〔進学先など)、学校、地元の期待も背負って投げるものなのだ。疲れているはずなのに9回に140キロ以上のストレートを気迫で投げ込んだ。

culum-f-20130822-arai.jpg         <主将を務める次男の海斗選手の肩を抱く前橋育英・荒井直樹監督(共同)>

 監督さんについてもふれたい。荒井直樹監督。大会中に49歳の誕生日を迎えた。直接取材したことはないが、ジェントルマンである。静かな語り口。穏やかな表情。次男が主将。奥さんは野球部の寮母さん。取材にも誠実に答えていた。人柄がいい。もし自分が高校生だったら、こういう監督の下でやってみたい。高校野球の監督さんは大変だと思う。チームの勝利はもちろんだが、選手の進路や様々な問題を処理しなければならない。プロ野球では役割分担がなされているが、高校野球では監督がGM、コーチ、フィールドマネッジメント、すべてやらなければならない。プロ出身者に高校野球指導者の門戸が広がったが、もし指導者になるのならかなりの覚悟が必要だろう。

 準優勝に終わった延岡学園。宮崎に優勝旗を持ち帰ることはできなかった。でも、このチームは甲子園のファンに強烈な印象を残したと思う。選手は当然だが、アルプススタンドの応援である。

 ブラスバンドが、あまちゃんのオープニングテーマ曲をチャンスで演奏すると、不思議と点が入るのだ。1点差の終盤はあまちゃん、あまちゃん、あまちゃんの繰り返し。演奏に合わせてスタンドのファンが手拍子を打つ。最終回はすごかった。アルプス席だけではなく、内野席、ネット裏まで手拍子の輪が広がり、コンサート会場のよう。惜しくも無得点に終わり試合は終わったが、いつまでもあのメロディーと手拍子を聴いていたかった。

culum-f-20130822-nobegaku.jpg           <ファンに強烈な印象を残した延岡学園アルプススタンドの大声援>

 最後にこの夏、取材をしていて一番印象に残った言葉を記しておきたい。

 「 マウンドというより、甲子園の雰囲気が好きです。言葉では説明できません」。

 甲子園優勝投手となった前橋育英・高橋光成投手が準決勝で勝った後のコメントだ。

 夏の甲子園の戦いは過酷である。暑い、日程も厳しい。それでも選手はひたむきに白球を投げ、打ち、追う。お客さんもテレビ中継があるのに、灼熱のスタンドに早朝から行列を作って詰めかける。全国から長期滞在で「遠征」してくるファンも多い。

 銀さんにこだまする拍手、歓声。ブラスバンドの演奏、応援...。

 甲子園は高校球児と高校野球ファンの聖地なのだ。

 だからこそフェアプレーの精神で正々堂々と戦ってほしい。駆け引き、騙し合い、ルール違反ギリギリのプレー...。それを否定する気はない。ただ、力と力、技と技、気迫と気迫のぶつかりあい。そんなプレーを見て、拍手、歓声を来年また、このスタジアムで聴きたい。

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