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◆ふくださん 福田豊(ふくだ・ゆたか)。85年日刊スポーツ新聞社入社。野球記者を11年。巨人、西武、日本ハム、アマ野球、連盟などを担当。野球デスクを7年勤めた後、2年間の北海道日刊スポーツ出向などを経て、現在は毎朝6時半出社で「ニッカンスポーツ・コム」の編集を担当。取材で世話になった伝説のスカウト、木庭教(きにわ・さとし)さん(故人)を野球の師と仰ぐ。好きなスタジアムは甲子園と、雄大な富士山を正面に拝める山梨・北麓球場。@fukudasunのアカウントでツイート中。

甲子園閉幕 103個の死球が意味するもの

11年08月20日 [18時29分]

 日大三(西東京)の10年ぶり2度目の優勝で甲子園大会が幕を閉じた。

f-bb-yosinaga-01.jpg                     <10年ぶりの優勝を決め喜ぶ日大三・吉永投手>

 日大三は吉永投手の踏ん張りが大きかったが、打線の力強さが際立っていた。甲子園で準々決勝と準決勝を観戦したが、打球音、内野を抜けていくゴロの速さは他チームと明らかに違った。

 近年(かどうか分からないが)の甲子園は打たないと勝てない。投手力も大事だが、打力がないと勝ち進むことはできない。光星学院・仲井監督が準決勝の後、こんな話をしていた。東北のチームがなぜ全国制覇できないのかを問われた時だ。

 「打力が落ちるのかな。攻撃力がないと甲子園では勝てない。打てないと、ここでは勝てないんです」。

 今年の光星学院は、川上、田村、北条のクりーンアップが強力。打力には自信があった。だから決勝まで勝ち進めたのだろう。しかし、日大三はさらにその上をいった。

 今夏、久々にじっくりと試合を見て感じたことがある。死球が多いことである。

 決勝戦のNHKのテレビ中継でも解説者が死球の多さを指摘していた。調べてみると全48試合で103個。日刊スポーツに残っている89年以降の数字を調べてみた。

89年=55、90年=54、91年=37、92年=50、93年=50
94年=62、95年=82、96年=76、97年=76、98年=80※
99年=62、00年=55、01年=91、02年=86、03年=104
04年=82、05年=96、06年=99、07年=100、08年=100※
09年=108、10年=94(※印は記念大会で55校参加、それ以外は49校)

 昨年が94個、09年が108個と大きな差はない。10年前、01年の91個に比べると多少増えたかなという程度である。ところがさらに10年前、91年大会を調べてみたら驚いた。同じ48試合で37個しかないのである。この年は極端に少ないとはいえ、20年前はせいぜい50個を超える程度である。

 なぜ近年これだけ死球が増えたのか考えてみた。打者にエルボーガード(ひじ当て)が認められたのはいつからだろうか。詳しい資料が手元にないので過去の甲子園のプレー写真をデータベースでチェックした。すると00年まではひじ当てをして打っている選手は見当たらない。翌01年からひじ当てを付けた選手が登場。前記の死球の数を見ると一目瞭然(りょうぜん)。01年は91個と急激に増えていることが分かる。

 エルボーガードがあれば死球のダメージを軽減することが可能になる。つまり打者が死球を恐れなくなったのだ。

 今年の大会でもホームベース寄りに立つ打者が非常に多かった。これだけベース寄りに立たれると投手は内角球が投げづらくなり、外角中心の配球になる。そこを打者は狙い打つ。内角球は捨てる。追い込まれたらファウルで逃げればいいし、ちょっと痛いのを我慢して当たればいいわけだ。投手も外角球を狙われているのが分かっているから内角も使いたい。しかし悲しいかな、制球力がない。ぶつけてしまうか甘くなって長打を食らうか、そんな悪循環が目立った。

 避けずにぶつかると審判が死球を取ってくれないケースもあったが、あれだけ近くに立っていたら、なかなか避けられるものではない。右投手のスライダーがちょっと内側に入っただけで左打者の足に当たる。そんなシーンを何度も見た。

 1回戦の帝京-花巻東戦では計9個の死球が出た。プロ野球なら乱闘になってもおかしくない数字である。ただまったく違うのは、投手がぶつけるという印象がない点だ。打者は内角球を恐れず当たる。そして喜んで一塁へ行く。

 勝つためには合理的な戦法には違いない。エルボーガードに金属バット。少々スピードがあっても制球力のない投手では通用しない。逆に内角をきっちり攻めるコントロールがあれば、抑えることができる。今大会、関西(岡山)の水原投手が九州国際大付(福岡)の強力打線を5安打2失点(延長12回)に抑えた。内角への制球が素晴らしく2死球を与えたものの、140キロ前後のストレートをズバズバ懐に投げ込んだ。見事な投球だった。

 大学野球やプロ野球ではここまでベース寄りに立つ打者は少ない。バットが木製に替わるというのもあるし、投手の制球力やキレが違う。まともに死球を受けていては体がいくつあっても足りないだろう。

 高卒の打者がプロの1軍で活躍するのに3~4年かかったり、まったく芽が出ず去っていくのは、こういったことも要因の1つではないだろうか。機会があったら現場の監督や専門家に取材してみたい。 

 「野球」と「ベースボール」の違いと同じくらい、「野球」と「高校野球」は別物なのかもしれない。

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