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2010年10月22日

「パワースポット」として足りないもの:酒井俊作

 ここ最近、世間では「パワースポット」が流行している。テレビを中心に、あらゆるメディアがこぞって取り上げる。僕もまた、そういう特集が組まれた雑誌を買っては、つい読み込んでしまう。それは余談として、プロ野球を取材する現場に身を置くと、野球場もまた「パワースポット」なのだと感じるときがある。

 グラウンドは、あらゆる感情が交錯する場だ。駆け引きし、集中し、耐え、喜び、悔しがる…。驚き、怒り、笑い、涙を流す…。選手であれ、観衆であれ、1球が織りなすドラマに心を揺さぶられる。かつて阪神を担当していたとき、取材でこんな事実を知った。車いすに乗った浜中ファンの青年が甲子園でプロ初本塁打を目撃。その瞬間、思わず両足で立ち上がったという。その後、右肩手術から復帰した浜中と歩調を合わせるかのように、歩けるまでに回復したと聞いた。

 夢を与える…。勇気をもらう…。これもまた野球場で芽生える気持ちだろう。開場2年目のマツダスタジアム。ひときわ大きな声援を浴びたのがプロ21年目の前田智徳だった。両足アキレス腱を手術し、下半身に不安を抱えながら復活。代打を中心に、勝負強い打撃を披露した。ベテランには1つの役割があった。旧広島市民球場で設置していた「前田シート」を継続。年間指定2席を心身障がい者のために用意していた。

 広島市心身障害者福祉センターの担当者は言う。「みんな球場に行って感動しています。新球場は障がい者に配慮されていて、近くで見れるのもうれしい」。旧広島市民球場からの縁があり、新球場建設の際には球団からバリアフリーに関する意見を求められることもあったという。今年5月に車いすでの来場者(介助者含む)が5000人を突破。前田もまた、真心のこもった新球場建設に一役買っていた。今季初めて登場したマツダスタジアムで精いっぱいの力を尽くした。

 いち早くシーズンを終えた球場からは、秋季練習を行うカープ選手の掛け声やBGMが流れてくる。テレビをつけると、クライマックスシリーズの戦況がまぶしく映る。この寂しきコントラスト。愛情あふれた広島の球場が「パワースポット」であるためにまだ足りないもの。それはやはり、多くの人が流す、嬉し涙なのだと思う。(酒井俊作)


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カープ担当記者日記
酒井俊作(さかい・しゅんさく)
 03年入社後は6シーズンの阪神担当を経て、08年11月から広島担当。1人旅と焼酎を愛してやまない。カープが優勝した1979年に鹿児島県で生まれ、京都府育ち。
高垣誠(たかがき・まこと)
 1963年、兵庫県生まれ。89年の入社から様々な部署を異動。もらった辞令の数は社内一と自負するおめでたい人。プロ野球ではかつて中日、オリックスを担当。15年ぶりのプロ野球担当、広島単身赴任も慣れてきた46歳。

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