2009年10月02日
ワンプレーに執念を燃やす男:酒井俊作
クライマックスシリーズ進出争いは、いよいよ10月に突入する。最後の最後まで結末は読めない。5連敗して絶望感に打ちひしがれたカープも、横浜戦3連戦で3連勝し、息を吹き返した。数字的には厳しいが最善を尽くすのみ。2日からの関東遠征がカギになる。
ありふれたワンプレーに執念を燃やす男がいる。39歳の石井琢朗だ。9月中旬のマツダスタジアム。試合前練習が始まる前だった。一、二塁間でのダッシュを終えると、トンボを手に取り、整備されていたグラウンドをならした。自ら守ることのない二塁定位置あたりを入念に5分…。グラウンドキーパーからはトンボの先端についた土を落とす道具を借りていた。トントンと、土をはたくと再びトンボを手に取り、さらに5分近くなだらかにならす。
これが終われば、今度は自らの守備位置である遊撃周辺も丹念にトンボで整地する。実に15分以上もグラウンドの整備に費やした。野球選手はノックを受けたあとなど、トンボで土をならすものだ。しかし、あそこまで丹精込めて整備するのは珍しい光景だった。石井は「おまじないだよ、おまじない! イレギュラーバウンドしないようにっていうね。走ったあととか(デコボコが)できてしまうから」と言った。
確かにそうなのだ。夏過ぎくらいから、イレギュラーバウンドして野手がゴロをはじいたり、そらしたりするシーンが目立っていた。試合終盤なら、ワンプレーが致命傷になりかねない。そんなリスクを排除するための周到な準備。まったく目立たないのだけれど、そこにはチームの勝利を願う気持ちがあふれている。
昨年11月。横浜を戦力外になり、広島入りした際に松田オーナーは期待を込めて言った。「優勝を経験しているベテランが内野に1人いればいい。プレッシャーがかかるなか、下支えしてくれる選手。シーズン終盤の順位が競ったときにすごく役に立つと思う。苦しさに耐えうるね」。その真意が分かった、初秋の一日だった。【酒井俊作】
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