2009年8月05日
ブラウン監督版「今そこにある危機」:酒井俊作
「今そこにある危機」は俳優ハリソン・フォードふんするCIA情報官を描いたハリウッド映画だった。
唐突だが、カープの戦いぶりを追いかけていて、最近ふと浮かんだのが冒頭のフレーズなのだ。クライマックスシリーズ進出が厳しい情勢のなか、ブラウン監督は上位浮上に向けて、あらゆる策を繰り出している。
8月2日の横浜戦。同点で迎えた延長10回表に送り込んだのは、新人の小松だった。指揮官は「相手の打順を見て、永川をクリーンアップと対戦するまで取っておきたかった」と説明。休養日だった横山を使えずとも、守護神永川をつぎ込むことはできたはずだ。延長戦では、力量の勝る投手から優先的に起用するのが勝負の王道。下位打線相手とはいえ、永川がピシャリと抑え、勢いよく攻撃に移ることはできなかったか。
ブラウン監督のいう「クリーンアップ」と対戦するのは、小松がもし3者凡退に抑えていれば延長11回表以降になる。そこに延長10回裏で試合を決めるという「攻めの姿勢」があったなら、また違った選択肢もあったのではないだろうか。
こんなこともあった。7月20日の中日戦。1点を勝ち越した直後の8回裏、代打を送られた石原に代わってマスクをかぶったのは12年目の倉ではなく、3年目の会沢だった。ワンプレーが勝負の行方を分ける試合終盤。しかも、1番井端からの好打順だった。この回に2失点して逆転負けした試合後、指揮官は「会沢の肩で盗塁を防ぐ意図があったんだ。井端が一塁にいれば打席も荒木だし(盗塁を)仕掛けてくるだろうから」と振り返った。そこからは、まず井端を抑えることよりも、出塁したことを想定しているというニュアンスが多分に含まれている。
指揮官の胸中に宿っていたのは『危機管理』の意識だろう。確かに、事態を先読みし、あらゆるリスクを想定した上で、タクトを振るうのはリーダーに必要な資質だと思う。慎重さと大胆さを使い分けるバランスは難しいが、しかし、二つのケースからは、危機管理にとらわれ過ぎた「守りに入った采配」といった印象が否めない。せめて、前のめりに倒れてほしい。勝負事で大切なのは攻める姿勢であり、そこから士気も高まってゆく。いまを乗り越えなければ、未来はやって来ないのだ。
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